3
「おいシン、お前さんに急ぎの電話、外線3だ」
「相手は誰ですか?」
「『柊さん』、だとさ」
俺はその名前を聞くと即座に電話に出る。
わざわざ俺の勤め先に電話を掛けてくる理由は一つしかない。
「も、も、もしもし、シ、シンです。み、みきさんですか?」
『シン君? みきです』
「ひ、ひょっとしてつかさが………?」
『そう、陣痛が始まって今病院。お仕事で抜けるのは難しいと思うけど、伝えとこうと思って』
焦りまくってる俺に対して、さすがに四人も子供を産んだだけあって、みきさんは落ち着いていた。
少し事情を聞き、俺はみきさんに礼を言って受話器を置いた。
「シン、おめでたか?」
「は、はい…みたいです」
俺の答えに職場内で祝福や囃し立てる声が上がる。
「じゃあ、お前はもう上がれ」
「えっ、いいんですか!?」
「安心しろ、その分ちゃんと減俸しといてやる」
「ぐっ! ………」
これから何かと金がいるのに…減俸という上司の言葉が俺にのしかかってくる。
「ならお前、お金と子供どっちを見たい?」
「そ、それは………」
「割り切れよ、出ないと………」
「分かりました!! シン・アスカ早退します!!」
「それはない」
「えー!?」
「おいおい、寿早退とでも言うつもりかよ」
俺の苦渋の決意表明にあちらこちらからブーイングの嵐。
「おいおい、オレ達はチームなんだ! 息を合わせてバッチリ行こうぜ!
なんてたってシンはこの後、皆に出産祝いで奢ってくれるんだからな!」
「はいー!?」
上司の説得(?)に職場内で歓声が生まれる。
……どうやらオレの昼飯は当分カロリーメ○トで決定らしい。