「おいシン、お前さんに急ぎの電話、外線3だ」

「相手は誰ですか?」

「『柊さん』、だとさ」

 俺はその名前を聞くと即座に電話に出る。

 わざわざ俺の勤め先に電話を掛けてくる理由は一つしかない。



「も、も、もしもし、シ、シンです。み、みきさんですか?」

『シン君? みきです』

「ひ、ひょっとしてつかさが………?」

『そう、陣痛が始まって今病院。お仕事で抜けるのは難しいと思うけど、伝えとこうと思って』

 焦りまくってる俺に対して、さすがに四人も子供を産んだだけあって、みきさんは落ち着いていた。

 少し事情を聞き、俺はみきさんに礼を言って受話器を置いた。



「シン、おめでたか?」

「は、はい…みたいです」

 俺の答えに職場内で祝福や囃し立てる声が上がる。

「じゃあ、お前はもう上がれ」

「えっ、いいんですか!?」

「安心しろ、その分ちゃんと減俸しといてやる」

「ぐっ! ………」

 これから何かと金がいるのに…減俸という上司の言葉が俺にのしかかってくる。

「ならお前、お金と子供どっちを見たい?」

「そ、それは………」

「割り切れよ、出ないと………」

「分かりました!! シン・アスカ早退します!!」



「それはない」

「えー!?」

「おいおい、寿早退とでも言うつもりかよ」



 俺の苦渋の決意表明にあちらこちらからブーイングの嵐。

「おいおい、オレ達はチームなんだ! 息を合わせてバッチリ行こうぜ!

 なんてたってシンはこの後、皆に出産祝いで奢ってくれるんだからな!」

「はいー!?」



 上司の説得(?)に職場内で歓声が生まれる。

 ……どうやらオレの昼飯は当分カロリーメ○トで決定らしい。





戻る   別の日常を見る   進める