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俺は頷いてから後悔した。何故『月』から取ったと言わなかったのかと………
「……やっぱりシンちゃんはその人のことが忘れられないんだね………」
「えっ、いや、違っ!」
なんたる不覚
もはや何を弁解しても遅い、つかさの目には完全に涙が溜まっていた。
「わたしと結婚したのもわたしが可哀想だったからでしょ!?
ほんとはお姉ちゃんやこなちゃんやゆきちゃんの誰かと結婚したかったんだ〜!!
うわぇぇぇぇぇーん!!!」
「お、おいっ!?」
子供の様に泣き出すつかさ。
今の時期の女性はナイーブになってると子育て教室で聞いていたけど、これ程とは………
とはいえ、このまま泣かれても困るため、俺はつかさを必死になって宥める。
「待て! 落ち着けつかさ! ……い、いいか、確かにその人は戦友でもあったし、彼女だった
そしてこなたやかがみ、みゆきも俺に取っては大切な人達だ
でも今一番本当に愛してるのはつかさなんだ!!!」
かなり恥かしい事を言ってるけど止むを得ない、本当の事を言わないとつかさは泣き止まないだろうし
「……ほんと………?」
俺はつかさの肩に手を置き、つかさの目を見ながら頷く。
「よかった〜私もシンちゃんを愛してる!!!」
「ちょっ!! ま、待てっ!!………」
「あらあら、二人共ごちそうさま」
その声に抱きついたままの体制で振り向くオレとつかさ。
そこにいるのはかがみに似ている、いや正確にはかがみがこの女性に似ているんだろう。
そして口元には微笑みを浮かべ、俺達を見つめる眼差しは母親そのもの………。
「お、お母さん………」
そう…みきさんは妊婦のつかさを手伝うために俺達の家に来てるんだった………。
何という恥ずかしいところを………
さっきの俺、悪いけど、ちょっとジンに乗ってフリーダムに挑んできてくれ
俺は心の底からそう願った。