思いの外緊張するというのが正直なところだ。

 つかさとは付き合う前から2人だけで遊んだこともあるし、

今更過ぎるはずなんだけど、どうやらこれが恋人の誕生日というイベントの力らしい。

 そして緊張しているのはオレだけじゃなく、つかさの方もモジモジ、ソワソワといつも以上にワタワタしている。

 もっともそれもかわいいんだけどな



「つ、つかさ、そ、その誕生日、おめでとうな!」

「あ、ありがとう………」

 顔を真っ赤にしてうつむくつかさ。

 そんな行動されるとこっちも余計に照れる

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 そして妙な沈黙が続く。



 なんかこのままでもいい気がしてきたけど、一応段取りを考えたのだから、進めないとな



「つかさ、これ」

「えっ?」

 といってオレはぞんざいに箱を渡す。

「なんだろ〜?」

 そして出してつかさは固まる。

「え〜と………?」

「パッドだ」

 自信満々に答えるオレ。

「つかさ前から胸が小さいって嘆いてただろ。でもこれさえあればもう安心だ!」

 気取ったポーズを取るが、もちろんこれはわざとだ。どこの誰が彼女の誕生日にそんなものを渡すか!

 このふざけきったプレゼントの後に本命のプレゼントを渡す!

 よくある手と言えばそうだけど、逆に言えばそれだけ効果が高いってことだ。



「ううっ………」

「つ、つかさ?」

「シ、シンちゃんはやっぱり胸の大きい女の子がいいんだね………」

「えっ? えっ? いや」

 涙が瞳から溢れ、誤解しまくった発言をするつかさ。

 しまった! ダミーが効き過ぎた!!

「つかさ―――」

「うわぁぁあぁぁぁん、シンちゃんのバカー! 大きらーい!!」



 大キライ

 大キライ

 大キライ

 大キライ



 上官のビンタ、実弾のレールガン、馬鹿野郎キック、そんなものがかわいく思えるくらいの衝撃。



「うわぁぁあぁぁぁぁぁぁあんんんん!!!!」

 閉じられてゆく意識の中で、つかさが部屋を出て行くの辛うじて見えた。





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