それはもう数年前の出来事だそうです

 ですがシンさんの中では、それはまだ終わっていないことなのです。



 シンさんはそれを終わらせようと、乗り越えようと日々を送られているのです。

 だからこそ今日、御家族の命日の日に、こうしていつもと変わらない日々を送ろうと努められたのに違いありません。



「やっぱり無理だったな、来年からこの日は家に引きこもっておくな」

 諦めという名の悟った顔でシンさんはおっしゃられます。



 いけません!



 このまま貴方は過去に負けてしまうのですか!?

 貴方は戦っていくと、宣言したはずです! 私に、大切な人達に!



「みゆきにも迷惑かけるし―――」

 シンさんの寂しげな顔を私は抱きしめてかき消します。



「私は貴方の恋人です」



 苦難があったら一緒に乗り越えていきます



 戦ってる貴方を知ってるから

 決して負けずに諦めない貴方を尊敬しているから



「私は貴方の恋人です」



 私は貴方を愛しているから



「でもダメだった」

 背中に回っているシンさんの手は震えておられました、そして声も。





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