シンさんが私を連れて来たのはゲームセンターという、私達のデートでは凄く珍しい所でした。



「クソッ、全然取れない!」

 シンさんの硬貨がその機械に消えて、もう何度目となったのでしょうか

「今度こそ!」

 ですがシンさんは全く止められる気配を見せず、再びクレーンを動かされます。

 いつもの負けず嫌い、とはやはり何かちょっと違う様に思います。



「よし、取れた! ほら」

 シンさんはずっと挑まれていたネズミのぬいぐるみを取ると、すぐに私の方に放り投げられます。

 こんなにも冷たいぬいぐるみは初めてです。



「次はアレだ! アレ!」

 狭い空間を誰とも当たらずに次のゲームに向かわれるシンさん。



 もうかなりのゲームをやっておられて、シンさんのお財布が心配です。

 現在大学に行きつつ、アルバイトのお金で生活をされておられているシンさん。

 貧乏だと嘆いておられますが、それは今の私なんかでは出来ない自立した人間。

 そんなシンさんを私は恋人というだけではなく、人としても頼もしく、尊敬できる方とお慕いしております。



 ですが今のシンさんは刹那主義的に目的なくお金を使っているとしか、私には見えません。

 そしてそれをお止めしようとしても、今の私の声はシンさんには決して届かないでしょう。



 でしたら私はどうしたら良いのでしょうか?



 はい、決まっています



 財布から一枚の硬貨を出します。



 ちゃりん



「みゆき!?」

 銃を模したコントローラを持たれた、シンさんが驚きの顔でこっちを見られます。

 今日初めてですね、私の方を見てくださったのは



「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」



 シンさんと同じ場所に行けばいいんです。





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