私が講義を終えて待ち合わせ場所に行くと、シンさんはすでに待っておられました。

「みゆきー!」

 私の姿を確認されると、手を振ってこちらの方に駆けてこられるシンさん。

 その姿に私はどことなく、犬を連想してしまいました。



「よし、行くか!」

 そして私の手を取られ、ずんずんとまるで走る様に進んで行かれます。

「あ、あの、どこに、行かれるんですか?」

 つんのめりそうになって聞いた私は、シンさんがいきなり止まられたので、あやうく本当に転けそうになりました。

 何事かと、シンさんの方を見上げると目を見開いておられました。



「そういや決めてなかった」

「では―――きゃっ!?」

 体勢も戻らぬ内に私は再び体を引っ張られます。

「取りあえず行ってから考えるか!」

「えっー!?」

 抗議しようかと思いましたけど、私は言葉を飲み込みます。



 それはシンさんの笑顔が子供みたいな顔だったからです。



 もちろんそれは気のせいかもしれません

 また、それは沈みかけた太陽のせいだったかもしれません



 その顔は子供みたいに泣き笑いの顔に見えたのです。





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