今の会話の意味を分かるやつがどれ位いるんだろ?

 少し前まではオレ達の間ではオレの過去に触れるのは禁止だった。

 そしてその事でオレは明らかに皆に気を使わせていた。

 でもその時のオレはそれをどうする事も出来なかった。

 だけど様々な事がきっかけで、完全にとはいかないもののある程度は吹っ切れるようになり、

今では会話のネタとして使う事も出来るようになった。

 もちろん人には触れられたくない事や聞かれたくない事がある。楽しい思い出ばかりじゃない、辛い思い出ばかりだ。

 だけどそれを理解してくれて、オレが乗り越えれる様に支えてくれる人達がいる。みゆきもその一人だ

 そして過去の事を話すごとにオレは絆みたいなもんが強くなってる、……って考えてるのはオレだけかもしれないけど。



「シンさん」

「ん?」

 しばらくしてみゆきが再び話しかけきたため、オレは視線を漫画からみゆきに移す。

「その…もし、あちらの、元のいた世界に戻れるのならどうしますか?」

 オレみじろきもせずにみゆきを見つめた。

 気が付くと窓の外では雨が降っていた。





「そうだな」

 オレは漫画を閉じて机に置く。

「戻れるんだったら、戻るぜ」

「知り合いの方がおられないかもしれないのにですか?」

「ああ」

 オレは力を込めて頷く。

 戦いがどうなったかは分からない

 オレの戦友達は死んでいるかもしれない



「前も話したけど、オレは力がない人が当たり前に、平和に暮らせる世界を作るために戦った

戻れるんだったら、オレはあの世界を平和にしたい、それで命を無くしても悔いは無い。オレがあそこで求められてるのは戦士だからな」

 オレの言葉にみゆきは哀しそうな目で見て来る。

 オレが命をなくす事に哀しんでくれてるのかもしれないし、未だにそんな物騒な事を考えてるオレを哀れんでるかもしれない

 ただこれはこの世界に来た時からずっと考えてた事だ。これを曲げるつもりはない

 それが分かってるからみゆきも何も言わないのだろう

 そしてオレはわがままだ。あっちの世界を平和にもしたい、こっちの世界の大事な人達のこんな顔も見たくない

 だからオレは曲げない信念に付け加えをする。





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