「大丈夫だ、時間も場所もバッチリだ」

 予想通りのみゆきの不安げな問いに、オレは一見不必要かと思えるくらいに力強く返す。

 みゆきからすれば、1週間ほどオレが音信不通状態だったら、約束を覚えてるか不安になるのは当然だ。

 オレだったら発狂してるかもしれない

 1つでもみゆきにメールをすれば、みゆきが不安になることもなかったってのに



『い、いえ、あ、あの、そういうことではなくて………』

 唇を噛んでいたオレに、みゆきの慌てた声が聞こえてくる。



 このことじゃない? じゃあ一体なんだ?

 みゆきに心配されることなんて、この他に心当たりがありすぎるし………



『私達、付き合っての始めてのクリスマスですね………』

「あ、ああ………」

 みゆきの明らかな言い回しに戸惑いが増えていく。



 …………



 沈黙ともいえない少しの時間のはずなのに、言葉が何もないのがこんなに不安になるなんて



『私こういうイベント事は始めてでして、粗相があったらすみません』

「…………、ハッ?」



 そして時が止まる

 今度は完全に



 …………。

 …………。



『あ、あの、シ、シンさん………?』

「そ、それだけか?」

『えっ、あっ、は、はい………』

 沈黙に耐えられなくなったみゆきが、恐る恐ると言った様子で尋ねてくる。

 一体オレはどう答えたらいい? どうしたらいい?

 というか、そんな理由だけでわざわざ電話してきたのか

 不安そうに



「プハッ!」

『シ、シンさん!?』



 堪えきれずに噴出すオレ。

 連絡1つ寄こさない彼氏を何も言わないどころか、失敗するかどうかも分からない事に前もってわざわざ謝る。

 女神はやっぱり心の広さが違うみたいだ



『そ、それと………』

「それと?」

『シ、シンさんの声を聞きたかったから………、そ、その………』

 どんどんと言葉が小さくなっていくみゆき。

 さすがにオレでも分かる、今のみゆきの顔はきっと真っ赤なんてもんじゃないだろう



 オレの女神は本当に可愛すぎて困る



 だからついつい



「明日任せとけ」



 格好つけてしまう





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