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電話から聞こえる聞きなれた声。
聞きなれているはずなのに、いつもいつも私はこの声を聞くと気持ちが弾んでしまいます。
この声は古から伝わるどんなクラシックよりも、私の心を捉えて離しません。
「今、お時間大丈夫でしょうか?」
とはいえ、この余韻にいつまでも浸ってるわけには行きません。
掛けたのは私ですし、用もあるのですから
『ああ』
即答をなさったものの、シンさんの声はどことなく疲れておられるような感じを受けます。
ここ数日大学で見かける日も少ないからもしやと思っていましたが、シンさんのことですから、明日のために頑張られていたのでしょう
そんなシンさんにこんなことを言うのは少し、いえ、かなり気が咎めます。
『どうした?』
ですが、シンさんはとても穏やかな声で私に尋ねてこられます。
この声を聞いてはとても隠し事なんて不可能です。
甘えてしまう、優しく、強い声。
いけないと思っていても、止める術は私にはありません
それにこれはちゃんと言っておかなければならないことです。
「明日の、クリスマスイブのことです」