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「ほな授業はこれで終わりや。あっ、そや高良」
「はい、なんでしょう?」
授業が終わり黒井先生が私を呼び出されました。
「今日の放課後、学級委員とは体育館で卒業式の準備やそうや」
「分かりました」
「後、人数足らんから誰か一人助っ人連れて来いっちゅう事や」
「ではどなたかに頼んでみます」
そう言っておきながら誘う人はもう決まっています。
「ほな頼むな」
黒井先生はそうおっしゃられると教室を出て行かれました。
「みゆきさん、先生の話なんだったの?」
私があの方の席に行くと泉さんが声を掛けてこられました。
「ええ、実は――
「というわけですので、まことに心苦しいのですが、シンさんお手伝いお願いできますか?」
「オレ?」
「はい。こういう場合男の方の方が効率が良いと思いますので」
私の言葉に泉さんとつかささんの御二人が、僅かですが反応なされました。
私の言葉の中に口実があることを分かっておられるのでしょう。
以前の私でしたら御二人に遠慮していたでしょう。ですが、今は…遠慮するわけには行きません!
「分かった」
私達の見えない火花に気付かれる事なく、あの方はあっさりと了承して下さいました。
「ありがとうございます」
「みゆきさんには日頃から色々と世話になってるしな。というわけだ、2人とも。今日は一緒に帰れないってかがみにも言っといてくれ」
「はいはい。今日はみゆきさんのターンってわけだね」
「ゆきちゃん、いいな〜」
「すみません」
「なんの話してるんだ」
あの方は笑っている私達三人を不思議そうに見ておられました。
「あのシンさん」
「まだ何かあるのか?」
話が一段落したところで私は再びあの方に話しかけます。
「いえ、そうではないのですが…そ、その…どうして私だけ『さん』付けなのですか?」
「え?」
とある本に親密度によって呼び方が違う、とかいてありました。これが本当かどうかは分かりませんが、
皆さんと違って自分だけ『さん』付けされているのはやはり気になってしまいます。
「なんで、と言われても…気づいたらだしな〜」
……これこそ新密度というものなのでしょうか?
「この呼び方が気に入らないのか?」
「い、いえ! そ、そんな事は決してないです! へ、変な事を聞いて申し訳ありません!」
こういうものはあの方の方から自主的に言ってもらわないと意味がないですよね。
そのためにも放課後にあの方との仲を少しでも深めないと…私は決意を新たにしました。