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「す、すみません、ちょっと、すみません!」
やっとの事で人波から脱出できたものの、シンさんとはかなり離れてしまいました
それにこの人の多さから、シンさんもさっきの場所にはもうおられないでしょう
携帯を取り出すと、ものの見事に『圏外』と表示されています。
「……シンさん………」
愛おしい人の名前を呟きます。
返事なんてありません、それどころか一人になった事を増々痛感してしまいます
こんなに人が多いのに流れていく中に知ってる人は誰もいません、皆さん知らない方ばかりです
シンさんはこの世界に来た時ずっとこんな孤独感を味わっておられたのでしょうか
こんな身も凍る様な感覚を
「大丈夫ですから」
私はぬいぐるみを強く抱きしめて自分にそう言い聞かせます。
「シンさんがきっと、きっと来てくれますよ………」
遭難した時は動き回らないというのが基本、というのが頭にあったわけではなく、今の私は恐怖感からただ動けずに、
木にもたれかけて、へたり込むのをなんとか踏みとどまっている状態です。
ひゅ~! どーん!!
音が辺りに響き、そして光が照らします。
その方向を見上げると、大きな花火が打ち上げられています。
「…………」
私は無言でそれを見ています。
一人で見る花火はこんなにも寂しいものなのですね
シンさんもどこかでこんな気持ちで、この花火を見ておられるのでしょうか?
シンさんは少し迷われておられるようでした、私の言葉のせいで
シンが苦しんでおられているのに、私はこんなところで何をしてるんでしょうか?
「ううっ、ぐす、………」
涙が溢れてきます。
勿論、そんな私を気に留める方など一人もおられません。
そこだけが、不幸中の幸いといえるのかもしれません
ひゅ~
花火の打ちあがる音がまた聞こえてきます。
最も今の私は上を見て再び花火を見ようという気も起こらないのですが………
「?」
ですが、その後に周りが光で明るくなりませんでした。
それどころか暗く………
私は思うところがあってうなだれていた頭を上げます。
「見つけたぜ、みゆき」
そこには予想していた人が、本当に心配そうな顔で立っておられました。
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