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ひゅ〜
どーん!
「花火、綺麗ですね」
「ああ」
オレ達はみゆきを見つけた場所から、花火を見ていた。
手はもう離れない様にしっかりと結んで
みゆきを探してる時は眼中に入っていないどころか、耳障りとさえ思っていた花火。
それが今では空に浮かぶその姿にオレは心を奪われていた。
「シンさん、ありがとうございました」
そんな気持ちもきっとオレの横に寄り添ってくれているみゆきのおかげなんだろう
「いや、当たり前だしな
オレはみゆきを守る、って今日は説得力0だけど」
射的では醜態を見せる、その後は励ましてもらう、そしてはぐれてしまう、祭りでやっちゃいけない事全てをやってしまった
「そんな事ないです、ちゃんと守ってもらいました、いつもの様に」
そう言ってみゆきは体をオレの方に傾けてくる。
本当は文句の一つも言っていいはずだ。それなのにみゆきの言葉からは感謝の念しか感じられない
本当にオレには勿体なすぎる恋人だと思う、かといって手放す気なんて当然起きない
みゆきという大切で掛け替えのない存在を
「二兎って言葉あるよな」
「はい、二つとも狙おうとすれば、どちらも失うというものの例えで使われますね」
「でもさ、それで2つとも取れないっていって諦めるのって、スッゲー馬鹿だよな」
「そうでしょうか?」
「ああ、オレだったら2つ取れる方法を探すけどな」
それがオレの答え
叶わないのかもしれない
でも、届かないっていって手を伸ばすのを諦めた瞬間に全てが無くなる
ないよりは絶対にあった方がいいに決まっているんだから
「でしたら、私もそれをお手伝いさせて下さい
一人より二人、三人寄れば文殊の智恵、といいますから」
「ああ、頼む」
素直に頭を下げのは、オレ1人の問題じゃないから、オレ1人だと出来そうにないから
「本当に綺麗だな、花火」
「はい」
明日からオレはまたみゆきと歩き出す。
ただ、今だけは
このまま時間が過ぎなければいいのに
打ちあがる花火に照らし出されるみゆきの顔を見て、珍しくそう思った。
〜 F i n 〜