「ほら、みゆき」

 本日の獲物である羊のぬいぐるみをみゆきへと手渡す。



 ちなみに射的屋のおっちゃんはオレを称えつつも、目玉を取られた事もあり複雑な笑みでオレ達を見送った。



「ちょっと、手間取ったけどな」

「そんな事ありません、凄く嬉しいです! ありがとうございます!」

 受け取ったぬいぐるみをぎゅっと抱きしめるみゆき。

 長らく外に置かれていたからお世辞にも綺麗とはいえないのに、みゆきはそんな事を全く気にしていない様だった。

 クソッ、ぬいぐるみのクセに! 羨ましい! 妬ましい!



「シンさん、質問よろしいですか?」

「えっ、ああ、どうした?」

 心の中を見透かされない様に咳払いを1つ。



「最初に外したのはワザとだったんですか?」

 みゆきがそう思うのも無理はない。

 それほどまでに鮮やかに、2度目の射的でこのぬいぐるみをオレは撃ち落したんだからな



「ワザとじゃないさ、1発目で取るつもりだった

 ただまあブランクがあってな」

 少し得意になったオレはみゆきの前で解説を始める。



 思えばおもちゃとはいえ銃を持つのなんて数年ぶりだ。

 おまけにライフル系なんて結局演習でしか使ってないんだから、自分で思うよりもカンが鈍っていた。



「そんで、修正してたら今度は銃に癖がある事に気付いてな」

 ワザとなのか仕様なのか、使われている銃は撃った弾が右側に僅かにズレるものになっていた。

「それを修正して狙ったら、今度は倒れなかった」

「だからあの方法を使ったのですね」

「ああ

 ……たださ、ちょっとゾッとした」

「何にですか?」

「オレの力が無くなってきている事に」



 こう見えても未だ毎日の訓練は欠かしていないし、そこらにいるヤツらならダースくらいは片付けられる

 だけど、知らず知らずの内にオレは強すぎるともいえる力を無くしている

 さっきの射的の様に

 みゆきと過ごす平和な日常を享受する代価に

 それは喜ばしい事ではない、オレの力はその平和と穏やかな日常を守る為に手に入れたものだからだ



 こんな事でいざって時にオレはみゆきを守れるのか?





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