3
「まあまあ、まだ1発目だぜ?
射撃なんてのはすぐに上手くなるもんじゃねえぜ、オレもそうだった」
射的屋のご主人さんがいたたまれない空気を感じてか、フォローの言葉を掛けて下さります。
私もそれに便乗させて頂き、高速とも言える速さで首を何度も上下させます。
「…………」
納得しきれていない顔をしつつも、シンさんは再び的の方に顔を向けられます。
ぽん
「ハズレー」
ぽん
「これまたハズレー」
ポン
「おっ、当たったか、でもその程度じゃ落ちないぜ!」
残るは最後の一発です
ポン
コルクは見事にぬいぐるみに当たり
「おっと、惜しかったなー」
それだけでした
ぬいぐるみは多少ぐらついたものの、すぐに元の位置へと戻りました。
シンさんは無言で銃を下ろされます。
正直に申しますとぬいぐるみが取れるか取れないかは、どうでもいい事なのです
嬉しかったのはシンさんが私の為にしてくれたという事、ぬいぐるみが手元に来るか来ないか、その副産物に過ぎません
ですがそれは私の話であって、シンさんはきっとそうではないはずです
恐らくプライドはひどく傷つかれたのでしょう
私のせいで
「えっと、あ、あのー………」
いてもたってもいられなくなり、励まそうとした私は言葉を途中で止めます。
何故ならシンさんの瞳には以前として力がこもっておられたからです
「おっちゃん、もう1回だ」
「お兄さんだっつうのー!
でどうする、1000円にしとくか?」
「いや、5発、それで充分さ!」
シンさんはさっきよりも不敵な笑みを浮かべられました。