祭りの場についた私達はぶらぶらと出店を見て回ります。

 特別にやりたいものはありませんが、こうしてシンさんと一緒に見て回るだけで私は充分なのです



「おっ、射的か」

「そういえば、射的の景品って落とせるものなのでしょうか?」

 私は日頃から抱いていた何気ない疑問を口に出します。

 それこそドラマや小説では射的で落とすシーンが多々ありますが、

コルク銃で小物ならまだしもあの様な大きなぬいぐるみを落とせるものなのでしょうか?



「やってみせようか」

「えっ?」

 シンさんは目を輝かせながら私に笑いかけてきます。

 面白い事を思いついた子供の様に

 こういうところは本当に男の子という感じです



「おっ、兄さんやるのかい?

 グレイト! 女の子の前で格好付けたいって気持ちは分かるぜ! オレも若い頃はそうだったしな!」

 射的のご主人さんの言葉に苦笑を浮かべつつ、シンさんは銃を手に取ります。



「500円で5発、1000円で12発だ、どうする?」

「5発で充分さ」

 コルクを銃につめながら自信満々に答えるシンさん。

 今でこそシンさんはこうして私と医大生をしておられますが、少し前まで別の世界で軍人をしておられ、その中でも超エリートだったそうです

 ですので、この程度はシンさんにとっては朝飯前―――



 ぽん



 どこか力の抜けた音ともに、コルクが銃口から出て行きます。

 そしてそのコルクは的の中で一番大きな羊のぬいぐるみの、斜め上を飛んでいきました。



「…………」

「…………」

「…………」

「…………」



 ぎいぎいぎいぎい



 まるでそんな音が聞こえてくるかのように、シンさんが首を私の方へと向けてこられます。

「……見た?」

 さっきの自信はどこへやら、今度は怒られてしょげ返っている子供の様な顔をしているシンさん。

「えっ、あっ、そ、その………」

 こういう場合はどう答えたらいいのでしょうか?

 頷けばいいのか、振ればいいのか

 どちらにしてもシンさんの面子を潰す事になってしまいます

 一体どうすればいいのでしょう?





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