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キャンプで作るカレーは美味しい。そんな事をこなた達が言っていた気がする。
なんでもその状況になるとどんなに不味くても美味しくなるらしい。
だがオレからすると、キャンプはアカデミー時代の訓練を思い出すからどんな事をしても苦味しか感じない。
だったら、なぜオレはわざわざ1人で野外でカレーを作って食べているのか?
それは感覚を取り戻すためだった。
野外で過ごすということは、感覚が研ぎ澄まされるいいトレーニングになる。
日頃、筋力は落ちないようにトレーニングをしているが、カンというものは今の日常生活でそんなに使う所がないため、どんどん衰えていく。
だから、オレはみゆきに誘われたときに渡りに船とばかりに、野宿の準備をしたのだ。
もっとも1日やそこらでカンが戻るとは思っていないが、やらないよりはマシなはずだ。
それをこなたに話したら、嫌な顔された。
こなたにしてみたら、オレをユル〜クすると公言しているのに、
そんな事されたら自分のしてきた事を無駄にされてる気がするので嫌らしい。
だが、オレとしてもそこは譲るわけには行かなかった。
それは皆を守るためだから
あいつらを助けれるくらいの力が欲しいから。
そんなに大きな力じゃなくていい。あいつらの笑顔を守れるだけの力が………。
だから何が起きてもベストを出せるため、それがこのトレーニングの理由だった。
もっともこなたにはトレーニングの真意は話していない、というか恥ずかしくてそんな事言えるわけがない。
それはかがみやつかさ、みゆきにも同様だ。
それは男の見栄というやつだから………。
「うわー凄いな!!」
睡眠防止のコーヒーを飲みながら何気なく上を見上げたオレは、そこにある無数の星に圧倒された。
この世界に来た最初、こなたの家から見る夜空の多さに驚いたのに、今広がってる星の数はその比ではない。
「凄いな………」
オレは再び呟く。
自分があの星が広がる宇宙で戦っていたとは信じられないくらいだ。
だが忘れるわけにはいかない。あの戦いを大切な人を守れなかった事を。
「んっ?」
何かの気配を察してオレは考えを中断する。
何かがこっちに近づいてきている。
オレは地面に耳をつけ、足音を聞く。
大きさ的にはそれほど大きな動物じゃない。だが、動物は人間なんかより大きな力を持っている、油断することは出来ない。
オレは威嚇を込めて焚き火の火を持っている木に移して、気配のする方に向ける。
だがそれでも気配は近づいてくる。
やるしかないか
こっちは武器らしいといえば、持っている棒とサバイバルナイフ。
やり方さえ間違えなければ、熊を撃退するくらいなら出来るはずだ。
「御一人で大丈夫ですか?」
だが、影の中から出てきたのは野性の動物ではなく、やわらかい雰囲気を持ったみゆきだった。