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「よし、状況を整理するぞ。現在の時刻は17時13分。この時点でバスはない」
「ここから別荘まではあと三十分程度で着きますから、ギリギリ日没までには着きます」
私はあの方の言葉に頷きながら地図を指して説明します。
「問題はその施設は電気やガスが来ているという事なんだが………」
「その点は大丈夫なはずです」
「……仕方ない。そこで一晩するしかないな」
「そうですね………」
「じゃあ、行くか! モタモタしてると日没だ!」
私は頷くと地図を片付けました。
「すみません、シンさん」
先ほどこれで最後だと言われたのに、私は再び謝ってしまいました。
ですがまさか一晩する事になってしまったのですから、責任は感じてしまいます。
「気にするなって、予想外の事は起きるもんだって」
「で、ですが、明日御予定があったのでは?」
確か明日は泉さんとの予定があったはず。携帯はここでは繋がりませんが、別荘には電話があるはずですし、泉さんに謝らないと………。
「ああ、けどこなたとの約束は昼からだったしな。なんとか戻れるだろ
それに今日は泊まる予定だったし………」
「えっ!?」
あの方は何気なく言われましたが、それは…ひょっとして………。
わ、私と…い、行けません! 私達はお互い親の許可を取らないと…ですが、あの方の決意が固いのでしたら………。
「みゆきを帰したらもう1回山に登る予定だったんだ、そのためにこんなに荷物を…みゆき大丈夫か!?」
あの方の言葉に思わずこけてしまった私に、あの方が声を掛けて下さいます。
「だ、大丈夫です。す、すみません」
そ、そうですよね…そんなに都合のいい事が起きるはずがありませんよね………。
「みゆき見えたぞ! あれじゃないか?」
「あっ、そうですね」
私の返した声が若干の棒読みだったことは否定しません。
「そういう事ですので、シンさんと一緒に今は山にいます………」
『ほうほう』
私が別荘に着いて初めにやった事は、泉さんに電話を掛ける事でした。
ちなみにあの方は外で用意されたテントを張られてます。
『まさか完璧超人のみゆきさんが協定を破るとは思わなかったよ』
「す、すみません〜!」
み、見えます、電話越しに怒りの炎をバックにしている泉さんが………。
「あのそれでかがみさんとつかささんにですが………」
『わたしから言っとくよ。二人とみゆきさんの犯した罪について話し合わないといけないし』
「ひっ! あ、あの出来ればおんび――」
がちゃん つーつーつー
「みゆき電話終わったか? って顔が青いぞ、どうしたんだ?」
「い、いえ、な、なんでもないです!! それよりどうかされたのですか?」
「ああ。これ。晩飯ないんだろ? 缶詰とレトルトパック、お湯は出るし大丈夫だろ」
「は、はいありがとうございます。あ、あの宜しければ一緒におしょ―――」
「じゃあオレ色々準備があるから。明日は早いから早く寝ろよ」
それだけ言うと踵を返してあの方は行ってしまわれました。
……ひょっとして今回私は、何も進展していないのでは………?
私は超然たる事実に頭を押さえ込みました。