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「き、きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
みゆきは大きな悲鳴を上げるとオレを跳ね飛ばし、明後日の方に走りだしてしまった。
幸いな事に180度反転したため、みゆきは平面のところに行ったのだから、安心…じゃない!!
ここは小さな山とはいえはぐれたら一大事、一刻も早くみゆきを落ち着かせないと………。
「みゆき待てー!」
オレはすぐさまみゆきの後を追って走り出した。
しかし、一瞬の時間差と、暴走した人間の進路は予想もつかないため、みゆきはなかなか見つからなかった。
「みゆきどこだー!?」
さっきから声を出しているのだが、返事はどこからも聞こえてこない。
「クソッ!! どこにいるんだ!?なんて事してくれたんだ………」
毒づいたのはオレが起こした行動にか、オレの『パルマ』にかは分からない。分かっているのはオレが焦っているということだけだ。
頭では冷静になれと言ってるのだが、時間が経つごとに悪いことばかり考えてしまう。
コケたり、動物に襲われてケガをしたんじゃないかとか、最悪の場合―――
「そんな事させるかよ!!!」
オレは振り払うかのように、首を強く振る。
もう決めたはずだ、大切な人を守るって、失わないって、今度こそ…だから………。
「みゆき、どこだー!?」
今はみゆきを探すことを優先させろ!!!
「……さん…さん………」
オレの声に返事があったのは、しばらく山を歩き回った後だった。
「みゆき!? みゆきか!? どこだ!?」
「……ここです…上………」
オレはその言葉に上を見上げて、辺りの木を見る。
1本だけ新緑のほかに鮮やかなピンクを生やしてる木があった。
「みゆき!! 良かった、無事だったんだな!?」
オレはみゆきの姿を見て、ホッと胸を撫で下ろす。
「は、はい、御心配をおかけしました………」
声を聞く限りではどこもケガはしていないようだ。それでもみゆきは木から下りてくる様子はない。
恐らくオレのした事に怒っているのだろう。
「みゆき、またオレはとんでもない事を…なんて言ったらいいのか………」
「……シンさん気になさらないで下さい。あれは私の不注意です。
それより私こそシンさんは私を助けて下さったのに、突き飛ばしてしまって申し訳ありません!
で、出来れば嫌な女と思ってくださらなければ幸いです………」
「そんな事思うわけないだろ!? 取りあえず、降りてきてくれ!!」
「そ、それが………」
みゆきは歯切れ悪く答えて、視線を逸らしてしまう。怒ってないなら、なぜ降りてこないんだ?
「……まさか………」
「……は、はい、お恥ずかしながら降りられなくなってしまいました…助けてください………」
みゆきは今にも消え入りそうな声で呟いた。