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「い、いえ………」
みゆきが首を振るのと同時にオレは続ける。
「ハッ! ウソだね! アンタの目はそんな目をしてるね!」
「…………」
「アンタは家族を亡くした可哀想なオレを慰めて優越感に浸ってるんだよな!?」
「…………」
「お嬢様育ちのアンタには、今のオレは捨てられた子犬みたいなもんだろ!?」
「わ、私は………」
みゆきがそんなやつじゃないのはオレがよく知ってる。今だって純粋にオレを心配してくれてるだけだ。
それは分かってるのに、出て来る言葉は罵り、嘲り。オレの一言一言にみゆきが傷ついてるのが分かる。
もうやめろ! これ以上オレの大事な人を傷つけないでくれ!!
もう1人のオレが哀願して来る。だがオレのみゆきに対する中傷は止まらない、止められない………。
「苦労知らずのお嬢様のアンタとオレとじゃ境遇が違うのさ」
「…………」
「家族の誰も死んでないアンタにオレの気持ちが分かるもんか!!!」
「……おっしゃる通り、私にはシンさんの心の傷の深さは分かりません……ですが」
みゆきはそこで言葉を切ると、涙を拭き、顔を上げた。
「ですが、言わせてください! なぜ今泣かないのですか!?」
「な……に………?」
真っ直ぐな瞳でオレを見つめて来るみゆきに対して、オレは言葉を失う。
「シンさんは……シンさんは我慢しすぎです!! ……もっと他の人を頼ってください!
私が頼りにならなければ、泉さんに頼って下さい! かがみさんに頼って下さい! つかささんに頼って下さい!
……そんなに強がって、自分一人で傷つくのはやめてください!!」
言い終わるとみゆきはオレに謝る。
みゆきにはしては、理論的ではなく感情的なものの言い方、しかもみゆきの目からは拭ったはずの涙、……誰のために?
……それは―――
「……オレはお前達に迷惑をかけない様にしてた、つもりだった……でも、それはオレの独り善がりだったんだな………」
「はい。私達はお互いを助け合っているんです……だから今は私が助けさせて下さい。あなたを」
震えるオレに、みゆきはいつも通りの笑みと言葉でオレを包んでくれる。
「……ごめん……少しお願いできるか………」
「はい、どうぞ」
みゆきは母親の様にオレを抱き締め、オレは子供の様に……泣いた………。