「……なあ、みゆき」

「なんでしょう?」

 隣りで座っておられるあの方が消え入りそうな声で呟きます。

 顔は俯いていて見えませんが少し落ち着かれたのか、今はあの方から怖い雰囲気は感じません。

 ですがそのお姿からは以前、脆さは消えていませんでした。

「……オレは乗り越えられるかな? ……過去を………」

「はい」

 私は迷う事無くはっきり頷きます。

「もし御一人で無理でしたら泉さん、かがみさん、つかささんが乗り越えるのを助けます。勿論……私も」

「……さっき見たいにか?」

「はい。さっき見たいに、です」

「……そうか………。だったら何とかなるかもな」

「はい。大船に乗った気でいて下さい」

「随分、軟らかそうな船だな」

「それがいいのでは?」

「……だな」

 そう言ってあの方は笑います……やっと笑って下さいましたね。

 私はそれが嬉しくて思わず私も笑っていました。



 御迷惑かも知れませんが、今度あの方の過去を聞いて見ようと思います。

 それで少しでもあの方を助けることが出来るなら………。





 私はあの方と笑いながら、そんな事を考えていました。





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