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「あら? ………」
夕飯の買い物に出かけていた私はあの方を見掛け思わず声を上げます。
確か今日はあの方は泉さん達と遊びに行かれてるはず、ですが周りにはあの人以外にはいません。
最初泉さん達と喧嘩をしたのでは、とも思いましたが何やら違う様です。
上手くは説明出来ませんが、いつもの優しくて強いあの方と違って………、怖くて脆いそんな印象を受けました。
そんなあの方を見て最初、私は声を掛けるべきかどうかためらいました。
ですが、こんな私でも何か助けになるのでは、と思いあの方に声をかけます。
「シンさん」
「……みゆき? ……ここは?」
「私の近所の公園ですけど……道に迷われたのですか?」
あの方は何度もこの近くを通っておられますから、迷うなんて考えられません。
それでも私が聞いてしまったのはあの方の目がそれだけ虚ろな瞳をしておられたからです。
「あ、いや……考え事してたらここに………」
「そうですか……何を考えてらっしゃったんですか?」
「そんなの知ってどうするんだよ!?」
打って変わって声を荒げるあの方。
まるで最初に会った心を開いておられないあの方のようです。
「す、すみません………」
「あっ、いや……こっちこそごめん………。
今日のオレはおかしいから、近付かないでくれるか?」
そう言って自嘲的な笑みを浮かべるあの方見ると、私は胸を締め付けられました。
「何かあったんですか? 泉さんと喧嘩なされたんですか?」
「…………」
「かがみさんとですか?」
「…………」
「まさか、つかささんと?」
「…………」
私は原因を尋ねましたが、あの方は私の問いにただ首を横に振るだけです。
「……バカな事だ。自分の家族の死んだ日だからって、他の人に八つ当たりしてさ……笑えるだろ?」
「いえ……そんな………」
以前にあの方の御家族は不慮の事故で無くなられたと聞いていましたが、……今日だったのですね………。
だから今日はいつもと違ってあの方が弱々しく見えるのでしょうか………。
「だからもう放っといてくれ」
「で、ですが………」
確かに私にはあの方の過去の傷に対して何も出来ないかもしれません。
ですが今の様子を見せられては、私にはとてもここにあの方を一人には出来ません。
一人にしたらあの方が壊れてしまう、そんな気がするからです。
「い、今からは特に用事もありませんし………」
「……アンタ、オレが可哀想だと思ってるんだろ!?」
そう言って睨み付けて来るあの方の顔は、私が今まで知っている顔ではありませんでした。