気が狂いそうだった



 今日1日は何もせずに部屋に引きこもっていた方がいいと、考えたけどそれは間違いだった。



 何もしていないと、浮かび上がってくる、家族が死んだ時の事を



 もう何年も前の事なのに



 何回もなんかいもナンカイも





 こんこん



 部屋をノックする音に体を震わせる。

 一体何に怯えるって言うんだ。



「シンくーん」

 オレは答えない、答えてしまえばきっと後悔する言葉しか出せないから



「万年筆が切れちゃってね、悪いけど買って来てくれないか?」



 厄介払いか



 そんな考えが過ぎったけど、すぐに頭を振る。

 そうじろうさんはそんな人間じゃない。

 恐らく気分転換を促しているんだろう。

 確かにこれだったら、外に出て体を動かしてる方がマシかもしれない。

 何より、そうじろうさんに迷惑だ。



「……分かりました」

 自分の唸りの様な声に驚く。

 もはや憎悪が止められない。



「そうか、助かるよ」

 そうじろうさんは別段気にする様子も感じさせず、立ち去った。



 悔しかった、自分がここまで弱いって事が





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