「シン、やっぱり今日はいいよ。かがみとつかさにはわたしから言っとくから」

 こなたが提案したのは少し遅めの朝食を食べている時だった。



「ダメだ。オレは約束は必ず守る」

「そんなたいそうな………。ただの遊びの約束なんだから…それにさ………」

「それに……何だ?」

「シンのそんな顔……かがみとつかさも見たくないと思うよ」

 そう言ってこなたは下を向く。オレはこなたのその行動に怒りを覚えた

「そうかよ! こんな辛気臭い顔をしてるやつとは遊びたくないわけだ!!」

「なっ!? そんなこと一言も言ってないよ!」

「いいや、言ってるね! 辛気臭いヤツを置いてってかがみとつかさと楽しく遊びたいってな!」

「だ・か・ら、言ってないて!!」

「止めないか2人とも」

 新聞を見ていたそうじろうさんが割って入った。



「シンくん、こなたの言う通り今日は遊びに行かない方がいいんじゃないか?」

「な、なんでですか!?」

 オレの怒りの言葉にそうじろうさんは少し困った顔をする。

「なんで、か……今の君は周りの人を傷つけてしまうかもしれないからね」

「えっ?」

「今だってこなたを傷つけてる」

 オレは慌ててこなたを見る。

「お、お父さん!!」

「こなたの気遣いに対して君は酷い言葉で返した。

 でも事情が事情だ。今日ばかりは俺も怒らないよ」

「…なんだよ、それ………」

 オレはそうじろうさんの言葉に拳を強く握った。



「同情かよ!? アンタに何が分かるってんだ!?」

「ちょっと、シン!?」

 こなたの制止の声も今のオレには届かない。

「今のオレの気持ちが――」

「分かるさ」

「えっ?」

「かなたを無くした時、俺も今の君みたいだったからね」

「………!」

「その時の俺は周りを傷つけて、色んなものを無くした。だから分かるんだ」

「…………」

 そう言ってそうじろうさんは寂しく笑った。



 そうだ……そうじろうさんは愛する人を、こなたは母親を亡くしているんだ。それなのにオレは自分だけ………。

「まあ、今日は父の日だし俺の顔を立てるってことで、な?」

「……はい………」

 さっき大事な人達を傷つけたばかりのオレに反論する権利なんかない………。



「あっ!そう言えば今日は父の日だったね〜すっかり忘れてたよ」

「こなた〜お父さん泣いちゃうぞ〜?」

「シンに何かやってもらったら?」

「そうだな……ってこなたからはないのか!?」

 さっきの事は気にしていない様子で楽し気に会話する2人。

 オレはこれ程までに自分に怒りを覚えた日はなかった………。





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