「もう春休みですね」

「ん? ああ」

 突如肩もみをしてきた彼に話し掛けます。



「あ、あの、どこか行きませんか?

 ひ、日替わりでもいいので………」

「どこか行きたいところあるのか?」

 自分の中では思い切った提案に、返されるのは拍子抜けの即答。



「は、はい、温泉なんてどうでしょうか?」

「なんだか年寄り臭いな〜」

 固まる私。

「あっ、いや、べ、別に、チョイスがであって、別に年寄りくさいとか、そういうんじゃないから! うん!」

「……とどめを刺さないで下さい………」

 少し涙が溢れます。



「いや、待て待て! 温泉いいよな! 『タッキュウ』とか! 後浴衣とか!」

「最後のお言葉で何を考えたか分かりました」

「そう! ……断じて違う!」

 くすっ

 自然とこぼれてしまう笑み。



「えっ?」

「本当に嘘がお下手ですね」

「わ、悪かったな………」

「いいえ」

 可愛いとは言ってはいけないのです。



 噛みしめる心地よさ。

 本当にお上手です





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