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「す、すみません…まさか小早川さんがいつも話していたお兄さん代わりの人だったなんて………」
そう言いながら頭を下げてるのは、さっきまでオレに敵意を剥き出しにしていた岩崎みなみだった。
「いや、気にしないでくれ。あんな言い方じゃあ怪しむのは無理もないさ」
「そうだよ、お兄ちゃん。どうして家族ですって言わなかったの?」
「いや、ほら………」
「あ〜お兄ちゃんまた遠慮してるー!」
オレの誤魔化しにゆたかが頬を膨らませる。
だよな。今日こなたにオレ達は家族だって言ったのに何変に遠慮してるんだ………。
「ごめんなゆたか。これからは…ゆたか!?」
ゆたかが少しふらつくが岩崎みなみが素早く回り込んでゆたかを支える。
「……大丈夫、小早川さん?」
「あはは、ありがとう岩崎さん」
「やっぱり具合が少し悪いみたいだな。早く家に戻ろうぜ」
「う、うん、ごめんね、お兄ちゃん………」
「オレ達に遠慮は無しなんだろ?」
そう言ってオレはゆたかの頭を撫でる。
「うん!
岩崎さんも駅まで一緒に帰ろ」
「……私はいい…近所の上級生の人と一緒に帰るから………」
ゆたかの誘いを岩崎みなみは少し考えてから断る。
その時にチラッとオレを見た気がするけど…遠慮させたかな?
「そっか…じゃあね岩崎さん」
「……うん…また明日………」
オレは岩崎みなみに軽く手を振ってから、ゆたかの手を取って校門を出た。
「あの、お兄ちゃん…気を悪くしないでね」
「何をだ?」
「岩崎さんの事、本当に凄く優しいんだよ! だからね………」
「分かってるさ」
オレは笑いながらゆたかの方を向く。
「ああいう子は自分の感情を表に出すのが苦手なだけなんだ。
だから人に誤解されやすいけど中身は良いものを持ってるんだ」
オレはそう言いながら今は会えない親友の事を思い浮かべる。
そう、もう会える事のない親友を………。
「うん! そうだよね! そういうところは岩崎さんもお兄ちゃんも一緒だね!」
確かにオレも性格上ムダに敵を作るけど…ってオレはゆたかに中身が良いって思われてるのか?
「あれ〜お兄ちゃん顔が赤いよ?」
「ゆ、ゆたかー! オレをからかうんじゃない!!」
オレの言葉に無邪気に笑うゆたか。
その笑顔は本当に可愛いものだった。
「あっ!」
「どうした」
突然ゆたかが声を上げる。
「岩崎さんにノート借りっぱなしだった………」
「明日返したらいいんじゃないか?」
「だめだよ、今日その教科宿題があるんだもん!
返してこなきゃ!」
走り出そうとするゆたかをオレは手で押しとめる。
「ダメだ。これ以上無理をしたら明日に響くだろ?
それはあの子も望んでいないさ」
「で、でも………」
「だから、オレが届けて来るから、ゆたかは駅の待合室で休んでろ」
「……シンお兄ちゃん…ごめんなさい………」
少しの間、見つめ合って出た呟くようなゆたかの言葉。
ゆたかは賢いから分かってくれたのだろう。
自分が倒れたら岩崎みなみが本当に心配する事を。そしてオレやこなたも。
だけどオレは謝られる事はされていない。迷惑だなんて思ってもいない。
オレ達は家族なんだから………。
「オレ達の間に遠慮はいらないんだろ?」
オレはゆたかに片目をつむってみせた。
「……うん、ありがとうシンお兄ちゃん!お願いします!」
オレはゆたかからノートを預かると今来た道を走って戻り始めた。