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「失礼します」
「お邪魔しま〜す」
「みなみ悪いな、オレなんかが参加して」
「……いえ、そんな、……こっちこそ、ありがとうございます………」
「あら、みなみが誕生日にボーイフレンドを連れてくるなんて、……明日は雨かしらね」
「……ち、違う…そ、その人は、ゆたかのお兄さんでみゆきさんのク、クラスメイト………」
私と一緒に出迎えに出たお母さんのボーイフレンドという言葉に、動揺してしどろもどろに説明する私。
「あら、そうなの? ごめんなさいね」
「いえ、友達ってのには違いがありませんから」
先輩は屈託なく笑う、……なぜだろう………?
なぜ、この人はここまで………?
『……Happy birthday to you〜♪』
歌が終わると同時に私はロウソクの火を吹き消す。沸き起こる拍手。
恥ずかしいのと嬉しい両方の感情が私に生まれる。
「あ〜みなみちゃん顔真っ赤だよー」
「……こんなに…大人数に祝われた事…ないから………」
「では来年はもっと人を呼びましょうか」
「ああ、そうだな」
みゆきさんの言葉に先輩も笑って頷いた。
「あの…先輩………」
「ん?」
チェリーと遊んでくれている先輩に、私は後ろから声を掛ける。
「本当に今日はありがとうございます、……こんなに盛り上がらない……誕生日に来てもらって」
本当は私が皆を盛り上げないといけないのに、……どうやってやったらいいのか分からない………
「別にオレはこういう静かなのも嫌いじゃないしさ、このメンバーだとこれくらいの雰囲気が一番いいからな」
「……そうなんですか? ……私はてっきり………」
「騒がしい人と思ってたか?」
「……いえ…そんな………」
ジト目で見てくる先輩に私は慌てて首と手を横に振る。
「そう言えばシンさんは転校してきた当初はあまり喋られませんでしたね」
「はい、私もお兄ちゃんに初めて会った時は睨まれました」
みゆきさんとゆたかの言葉に先輩はばつが悪そうに頬を掻く。
「いや…あの時は…色々と余裕がなかったというか…屈折してたというか…って今日の主役はみなみだろ!? お前達みなみの話をしろ!!」
そう言ってそっぽを向く先輩。
「もう、お兄ちゃん」
「……まるで子供ですね………」
「ええ、本当に」
私達三人は声を出して笑い合った。