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「それでは失礼します。シンさん、また明日」
「ああ、お休み」
みなみの誕生日会も終わり、みゆきはオレ達全員に頭を下げると自分の家へと帰っていった。
「さて、オレらもそろそろと言いたいんだけど………」
オレは言葉を切って椅子に持たれかけているゆたかに目をやる。
みなみの誕生日という事でいつもよりテンションが上がっていたゆたかは、すっかりガス欠になっていた。
「仕方ない、おぶって帰るか」
「あの…先輩…どうして今日は来て下さったんですか?
……ゆたかのため、ですか? ………」
なるほど、今日はやたらとみなみと目が合うと思ったらそんな事考えてたのか………
「似てるんだよ………」
少し考えてからオレはみなみに答える。
別に黙っておくほどの事でもないし、はぐらかしたら余計にみなみも気にするだろうからな
「え?」
「知り合いにさ、いつもクールな面してるのに、中身は熱くて絶対揺るがないものを持っててさ
後…ピアノが得意で…似てるだろ?」
それはオレが数少ない元の世界で背中を任せられる人物、戦友。
「あの…その人は?………」
「もう会えないとこにいる」
そう、例え元の世界に戻れてもそいつはもういない。
「……!! ……す、すみません」
「いや、話したのはオレだし気にしないでくれ
……それにあいつはあいつだし、みなみはみなみだもんな、今日でよく分かったよ。勝手に重ねて悪かった」
オレは逆にみなみに頭を下げる。
例えそいつがオレにとっての大事な人だったとしても、重ねられる方から見るとたまったもんじゃないだろう
こんなのはあいつにも、そして目の前の少女にも失礼なだけだ
「そうだよ〜みなみちゃんは私の親友なんだよ」
一瞬起きたのかと思いドキリとするものの、すぐにゆたかは規則正しい寝息をたてる。
「だな、……そしてオレの友達だ」
オレの言葉にみなみはいつも通りの無表情で頷いてくれる。
だけど、その瞳はとても優しい
「よっいしょっと、じゃあなみなみ」
オレはゆたかをおぶって玄関に向かう。
「……また来て下さい…今度は先輩に…ピアノを聞いてもらいたいから………」
「ああ、お願いするよ。誕生日おめでとうみなみ」
そうしてオレはドアを開けた。
振り替えるとみなみは、今までオレに見せたことない無邪気な顔で笑っていた。
〜 f i n 〜