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シンがリビングに着いたと同時にオープニングムービーが流れる。
すると、今まで乗り気オーラを出していなかったシンが走ってテレビに近づく。
「デ、デスティニーは? デスティニーは出てるの?」
「ああ、元気にアロンダイトを振り回してるよ」
わたしの冗談を聞いてるのか、聞いていないのか。シンは返事もせずにムービーでかつての愛機の出番を今か今かと待っていた。
「出番が少ない………」
「はいはい、そうだね」
ムービーが終わり、何やら肩を落としてるシンを尻目に、わたしはスタートボタンを押してゲームを始める。
「クッソー! こうなったらオレがデスティニーの強さを証明してやる!!」
「あっ、デスティニーはわたしが育てるんで」
「…………」
何やら言いたそうなシンを無視して、わたしはデフォルトキャラをざっと見る。
「結構いるね〜」
「まあ最新作も出てるしな、初期段階で取れるキャラも増える一方だよな」
「でもさ〜」
「ん?」
「シンってこういう各ガンダム作品が集まるゲームでの能力って低いよね」
「なっ………」
シンは目で怒りを表現しつつも、口をパクパクさせている。きっと反論の言葉を考えているんだよ、これは。
「バ、バ、バカにするなよ!! ……そりゃ、確かに各主人公に比べたら、低いかもしれないけど………」
「ごめん、途中から声が小さくて聞こえなかった」
「オ、オレは育てたら強くなるんだ! 大器晩成タイプなんだよ!!」
いきなり大声で何やら主張しだすシン。
「でもさ、普通のユーザはそんな全員レベルMAXまで育てないよね。
だったらやっぱり初期能力で判断するじゃん」
「…………」
相手の沈黙を確認。今回もわたしの勝利。
もちろんわたしはシンをMAXまで育てて、ちゃんと愛でるから安心したまえと、心の中でシンにフォローを入れた。
「で、オレの使うキャラだが」
「シンはダメだよ、わたしが使うから」
この手のゲームのお決まり、同じキャラは使えない、となると原作再現か夢のコンビどちらかとなる。
シンは画面の各作品のキャラクター達を見て、曰く。
「じゃあ、仲良し設定が多いカミーユで………」
「強キャラ、強機体じゃん。こっちの事も考えてよ」
何やら涙ぐんでシンは別のキャラクター探し始める。
「ロランは使用不可だし、じゃあ、ドモン」
「あれ? この前、あっちがパクッたんだ、とか威勢よく言い放ったのは誰だったけ?」
「……アムロ・レイ」
「シンだとアムロのあの超絶操縦テクを再現できないからダメ」
「し、仕方ない…この元上司を………」
「プライドがないの? シンには」
「じ、じゃあ、この―――」
「それをとる気なんだ〜ふ〜ん。
ピンチになっても絶対に助けないから」
その人に恨みはないけど、シンがその人を取るとやっぱり面白くない。
「ないだろうが!! 取るヤツが!!」
吼えるシン・アスカ。
「あるじゃん、これが。ほら前作の主人公と夢のコンビ」
「鬼かお前は」
「じゃあ、この方は?」
「ピ、ピンクコワイ、ピンクコワイ」
「あっ、その設定まだあったんだ」
「なんでだ!? なんでレイがデフォでいないんだよ!?」
十字キーを押しっぱにして、画面に噛み付く勢いのシン。
「まあ、ここらへんのキャラを越したら出てくるでしょ。てなわけでシンは通信士よろ〜」
「分かったよ、ほらさっさとオレをクリアして相棒を出してくれ」
中々に可笑しなことを言ってる気がするけど、間違ってはいない。
「了解! シン・アスカ、デスティニー行きます!」
掛け声と共にわたしのシン・アスカは戦場に降り立った。