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「……何を馬鹿な」
少しの間があって、シン・アスカは鼻で笑う。
まあ当然の反応だよね〜
わたし達ですら未だに冗談半分の気がするもん
だけど、そうですねでは話が進まない
「じゃあこの部屋を見てごらん」
「この部屋に君が見たことあるものがある?」
打ち合わせ通りお父さんの言葉にわたしが続ける。
ここは半分物置に使っていた部屋だから、色んなものが転がっている。
だけどその中の一つとして、C.E.世界にはないもののはず! ……少なくとも本編を見る限りでは
シン・アスカは何とか知ってるものを見つけようとキョロキョロと辺りを見渡す。
ふっ、無駄なことを
「……ぬいぐるみ」
『………あっ』
見詰め合う、異世界の人間達、そして………
「なし! それはなしー!!」
「それ以外! それ以外でー!!」
「ふん、それ以外でもこんなものは用意すればそれくらいは出来るだろ!!
大方オレを混乱させて有利な情報を引き出すつもりなんだろうが、残念だったな」
わたし達を心底馬鹿にした目でシン・アスカはこっちを見る。
「どっくーんときたよー!!」
「こなた、落ち着け! ……じゃあシン君、付いてきなさい」
お父さんに続いてわたし、そしてシン・アスカ立ち上がる。
そう。まだまだわたし達のターンは終わっていないのだ!!
「これは…テレビか?」
リビングに着いたわたし達にシン・アスカが聞いてくる。
先ほどよりも威勢が少し小さい。
リビングに来る前に家の全部の場所を周り、そして見たはず、自分がいた世界とは全く違う空間を
「つけてみてよ」
形は違うけど、テレビの使い方はそう違わないはず、わたしはシン・アスカを促した。
シン・アスカは少し何かを考えていたみたいだけど、やがてリモコンを手に取る。
「…………」
無言でチャンネルを廻し続けるシン・アスカ。
一周、二週…どれくらい回しただろうか。
「こんなのデタラメだ!!!」
シン・アスカが吼えてリモコンを地面に叩きつける。
「でたらめじゃないよ。君も見たでしょ?
どの番組も、ニュースも、天気予報も知ってるのがあった?」
さっきのお返しにわたしは少し勝ち誇ってシン・アスカに言う。
「………っ!!」
「えっ!?」
シン・アスカはわたしを睨みつけると、玄関に向かって走り出した。
「追うぞ、こなた!」
「うん!」
お父さんの声にわたしも頷きつつリビングを飛び出す。
はたしてわたし達の足でコーディネーターに追いつけるか疑問だけど、逆ギレ(一応)主人公を近所に放すと何をしでかすか………
「………?」
だが予想外にシン・アスカは玄関から数歩の所に立っていた、その姿はほとんど抜け殻の様だった。