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「こなた、誕生日おめでとう!!」
ぱーん! ぱーん!
お父さんの声と共にクラッカーが盛大に鳴る。
机には大きなケーキ。
だけど、今ここにいるのはわたしとお父さんの二人だけ。
物心ついた時からわたしの誕生日は二人だった。
でも寂しくはなかった
お父さんは一人で十分騒がしいし、高校に入って親友と呼べる人たちも出来たし、毎日も楽しい
まあ最近生活がマンネリ気味なのは否めない
といってもこれは俗に言う思春期特有の誰でも通る道だから、それほど気にすることはない
ただやっぱり何かを期待してる
例えば剣と魔法の世界に召還されないだろうかとか、謎の宇宙生物が地球を襲ってきて、
わたしが巨大ロボットに乗り込んで戦うことになるとか、
はたまたいきなり転校生が現れてギャルゲーよろしくの生活を始めるとか…最後のは微妙にしょぼいけど………
とにかくそんなことをどこかで期待しているわけである
これは自分の趣味が大いに関連してるといえる
その証拠にこういった話を親友にしたら、『こなた、幻を想うって書いてファンタジーって読むんだよ』と呆れられてしまった。
だったらわたしの上位互換ともいえるお父さんにこの話をしたらどうなるか?
「ねえお父さん?」
なんとなく好奇心が湧いて、わたしは亡くなったお母さんの仏壇に線香を供えている、お父さんに声をかけてみる。
思い立ったら即行動の正真正銘の十七才なのである、わたしは
「ん、どうしたこなた?」
「お父さんって二次元の世界に行ってみたいって思ったことある?」
「ああ、そんなのしょっちゅうだな」
さすがわたしのお父さん、笑顔でそんなことをあっさり言う。
そこに…別に痺れないし、憧れもしない
逆に何十年後にわたしもあんなことを言ってるかもしれないと思うと少し鬱になる
が、そんな遠くのことまで考えない、大事なのは今を楽しむことだから
「どんな世界の?」
「んー色々有りすぎるけど、例えば、ロボットに乗って、二人の美女が俺を取り合って、義理の妹が婚約者みたいな世界とかな
あー言っとくけどお父さんが愛してるのは母さんだけだからな、そこんとこ勘違いしないようにな」
「はいはい」
惚気てるのかイマイチ訳分からないセリフを吐くお父さん
お母さんが生きてたら、お父さんを刺してるかもしれない。最低でも家庭内別居レベル
なんでお母さんはこんな人を好きになったのか…愛って分かんないねー
「そんなことよりこなた、恒例の誕生日プレゼントなんだけど………」
「わーい♪ わたしね――」
わたしの言葉は途中で止まる。理由は簡単。部屋全体が光ったから
よくよく考えなくても、これは召還イベントであり、わたしの今までの楽しくゆる〜い平凡な生活が、
楽しくゆる〜い刺激的な生活に変わる始まりでもあったんだけど、その時のわたしは眩しさから、目を守るのに必死だった