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「わたしはね、シンくんが合ってるか間違ってるか分からないし、自分が生きてる意味なんてのも分からないよ」

 相変わらずの軽い言葉にオレは思わず言葉を出そうとするが、止めた

 それは泉こなたが真剣な目をしてたから、そしてまだ何か言おうとしてたから。

 恐らく小さい頭で色々考えているんだろう。途切れ途切れ言葉を出していく。



「……わたしもそういうこと考えてた時期はあるよ

 でもまだ分からないよ…ただ、今楽しい、生きてることが楽しいから………、って答えになってないね」

「いや、そんな事ない」

 オレは泉こなたの発言にかぶりを振る。

 少なくとも目の前の少女は母親の死という過去に囚われずに今を生きている。オレとは違う

「お前は自由な明日か、平和な明日どっちがいい?」

「また難しい質問を………、う〜ん両方かな?」

「両方?」

「だって自由すぎるとなんかヤバそうじゃん? やりたい放題みたいな。

 でも平和すぎると堅苦しいイメージがあるし………、やっぱ自由な平和が一番!」

 子供の理論だ、でもなるほどと頷くオレが心のどっかにいた

 そうじろうさんの言った事が利いたのかもしれないし、泉こなたに怒っても無駄と悟ったのかもしれない

 オレの世界にはない発想、足りなかったら、足せばいい

 違う世界、違う価値観、違う考え、一日足らずでオレの中の世界は激変した気がする



「……え〜と何かコメントを貰えると嬉しかったりするんだけど………」

 頬を掻く、泉こなた。その行動は完全に子供のものだった。



「そうか、それは悪かったな。」

 そう言ってオレは泉こなたの頭を撫でる。

 人の頭を撫でるなんて、久しぶりだ

「……ねえシンくん、わたしをいくつだと思ってる?」

「10才くらいだろ? 生きてたらマユと年も近いし良い友達になれただろうな」

 オレの答えを聞いた泉こなたの顔には何故か、やはり、というのが映っていた。

「……えーと、わたし昨日付けで17才、つまりきみと同い年のはずですが………」

 人は本当に驚いた時に何も反応が取れなくなるものらしい

 オレは完全に石化した。



「……う、嘘だろ………」

 ようやく反応が取れたと思ったら、バカみたいにオレは目の前の少女を上から下に見るだけだった。

 どこをどう見てもオレと同じ年とは思えない。まさかこんなところで異世界だという事を実感させられるとは思わなかった

「きみ今めちゃくちゃ失礼なこと考えてるよね?」

「あっ、いや、その…ごめん」

 完全に動揺しているためオレは普段滅多に口にしない、謝罪の言葉を無意識に口から出ていた。

 そして泉こなたは謝られるのが意外だったのか、大きく瞬きをしたかと思うと



「ハハッ、アハハハハハハ―――」



 笑い転げやがった





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