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20


 帰り道にシン・アスカを見つけたのは運命としかいいようがないものだった



 その日わたしはバイトもないのにシン・アスカに一刻早く会いたいという理由で、普段滅多にしない、走って帰宅をしていた。

 普段周りをじっくり見ながら歩いていることなんてしない、しかも今は走っているのだからいつも以上に周りには目を配っていない。

 せいぜい進行方向に目を向ける程度

 だけど公園の前を通り過ぎた時

「あっ!!」

 勢いよく手を振って走っていたので、わたしの手から鞄がすっぽ抜けた。



「もー、トマホォォォォクブゥゥゥゥメランしてる場合じゃないって~」

 わたしはすっぽ抜けた鞄に文句を垂れながら、それを拾う。

 そして再び走り出そうと視線を上げた時に見つけたのだ、ベンチに座っているシン・アスカを。

 なんでこんなことにいるのかは、恐らくお父さんと言い合いにでもなったのだろう、お父さんは結構適当なこと言うし

 いくら家出がガンダム系主人公の必須イベントとはいえ、もうちょっと大人の威厳を見せて欲しいものだよね~お父さんには

「まっ、手間が省けるか!」

 わたしは体を直角に向けて、歩き出した。





「やっ、悩める青少年!」

「…………」

 気づいてはいるんだろうけど、シン・アスカはこっちを見ることなく座ったまま。

 スルーですか………。

 どうしようか一瞬考えたけど、わたしはシン・アスカの隣に腰を下ろす。

 

「なあ」

 どうやって話を切り出すかわたしが考えてる内に、驚くことにシン・アスカの方から話しかけてきた。

「お前はさあ、自分が生きてる意味って分かるか?」

 これまた中二病全開の発言だね

 でもさすがにシン・アスカの出す空気が茶化していいものではなかったので、わたしは黙って彼を見る。

「オレは誰に否定されようと自分のやってることは世界の、力のない人のために戦ってきたつもりだ………

 だけどそれは違うのか? オレが間違ってたのか?」

 口調こそわたしに聞いているが、彼の瞳にはわたしは映っていなかった。



 わたしの知ってる劇中でのシン・アスカは頑固だ。まあ純粋とも言えなくもない

 だからすぐに他の人と衝突を起こす、それはしばしば逆ギレと捕らえられる。わたしもそうだった

 それは裏を返せば、それは彼には曲げられないことがあったから、それは二次元のキャラでは必須条件

 でも今の彼は、その信念が折れかけている

 アニメだったり、漫画のキャラは勝手にわたしなんかがいなくても、自分であるいは仲間によって立ち直る。

 でもシン・アスカには、そんな頼れる仲間がいない。

 数少ない仲間もこの世界には来ていない。

 そして、わたしの目の前にいるシン・アスカはとても自分一人では立ち直れるとは思えない程に弱く、脆く見えた。



 そういうことか………



 わたしはお父さんの言葉をなんとなくだけど理解した、……最もこれが正解かどうかは分からないけど………

 そしてわたしはシン・アスカの力になりたいと思った

 なぜかは分からない、これが人間に元々ある、友情なのか、女に元々ある母性なのか、それとも別なものか………

 ただ思い返すと、わたしはまんまとシン・アスカによって出会いフラグを回収されていた。





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