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「あ〜シン君。朝の時言い忘れた事があるんだが………」

 2人っきりの昼御飯を食べ終え、席を立ち上がろうとするオレをそうじろうさんが呼び止める。

「なんですか?」

「真面目な話になるんだが………、君も覚悟して聞いてくれ」

 そうじろうさんの顔が今まで見た事がないものへと変わる。

 その顔からオレにはなんの話かは大体の察しがついた

「君の話だと、君はこの世界に来る直前にレイに会った」

 そうじろうさんの言葉にオレは頷く。

 もっともそれが本物のレイなのか、オレが見た幻かは判別が付けづらいけど………



「そうなると、やはりレイがなんらかの力を使って君をこっちの世界に飛ばしたと考えるのが自然だろう

 そこで一つ質問なんだが、君はこの世界に来てレイに会ったかい?」

「……いいえ」

 とは言っても、オレはほとんどこの家から出ていなし、レイが別の場所に飛ばされた可能性だってある

 なんにせよレイを探し出せれば、1前進する事になる。

「…………

 シン君これは俺の推察なんだが………、俺の知っている限りではレイは死んでいる

 そして、死んでいる人間と生きている人間は普通、会話どころか会うことも出来ない」

 そうじろうさんはオレに言っているのだろうが、それは自分自身にも言っている様な気がした。

「だから君はこの世界で来た一緒の方法を使って元の世界に帰るのは限りなく難しいと思う」

 オレはそうじろうさんの言葉を黙って聞いていた。

 そうじろうさんがどうしてレイの死を知っているかは分からないけど、この人がそこまで言うのだからある程度確証があるんだろう

 そしてオレもそんな感じは薄々していた。

 あの不思議な空間で会ったのは幻でもあり、現実でもあったのだろう



「驚かないのかい?」

 オレは答える代わりにテーブルに1つの物を置いた。

「これは………」

「さっきパイロットスーツを調べてたら出てきました

 オレのは軍服の方に付いたままです」

 FAITHバッジ。

 オレが知ってるFAITHは数える程しかいない

 そして、オレが元の世界で最後に会った人物もFAITHだった

となるとこのFAITHバッジが誰のかというのは考えるまでもない事だった

「……これを君に渡したということは、なんらかの意味があるのだろうな………

 なんにせよ、その人物は君を信頼しているという事なんだろうな」

「……でもオレにはあいつの、レイの考えが分かりません!!」

「……シン君」



 レイはなんでオレをこの世界に飛ばしたのか?

 そもそもあの時のレイはどこの世界かは分からないと言っていた。そこまでしてオレをあの世界にいさせたくなかった理由が分からない

 ……オレはあの時レイに戦い続けると言った、それがひょっとして原因なのか?

 オレは平和な世界を作るのに邪魔とレイに判断されたって事なのか………?

 オレはアイツが言った通り間違っているのか? ……オレの戦いは…無駄だったのか………?



「……シン君………」

「オレ、少し外に出てきます」

 オレはそれだけ言うと立ち上がり、玄関の方に向かう。

 正直言って信じたくない事ばかりだった。だけど、ただ否定して逃げているだけじゃ解決出来ない

 そのために今は一人で考えたい

 いつだってオレはそうしてきたし、ここは異世界だから頼れるのは自分しかいないのだから………



「シン君、少しくらいは自分のために生きてみないか?」

「自分のため?」

 そうじろうさんは外に出ようとするオレに止める言葉ではなく、別の言葉を掛けてきた。

「ああ、レイは君にそうしてほしいから、こんな事をしたんじゃないかな? 少なくとも俺はそう思うよ」



 アンタにレイの何が分かるんだ!!!



 喉まで出かけた言葉をオレは寸前で飲み込む。

 オレもそうだからだ。レイの事は自分から言ってくるまで体の事は何も知らなかったし、今だって全然レイのやった意味が分からない

 だからオレは無言で出ていく事しか出来なかった。



「シン君、晩御飯には戻ってきなよ。腹が減ったらいい考えなんて浮かばないからな」

 ドアノブに手を掛けた時に、掛けられたそうじろうさんの言葉のありがたさを知るのはずっと後になってからの事で、

今のオレには分かるはずがなかった。





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