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なぜこの世界に飛ばされたのか?
いや理由なんかどうでもいい
どうやってこの世界に来たのか?
それが今のオレが考えなくちゃいけない最重要課題だ
これさえ分かれば、帰る方法の手がかりになるはずだ
だからオレは考えた。考えて、考えてただひたすらに考えた。
「クソッ!!」
だが答えに辿り着く前にオレの頭にリミッターが掛かった。
本来オレは難しい事を考えるのは得意ではない、感情の方が先に動くタイプだ
考えるのはあいつ、レイの担当だ。そのレイがオレをこの世界に飛ばした…一体、何故なんだ………
こんこん
ドアのノックにオレの思考は中断される。
どうやら気配に気付かないほど考え込んでたらしい。
「シン君、いいかな?」
オレからの返事がないのにシビレを切らしたのか、泉そうじろうがドア越しに声を掛けてくる。
無視しようと思ったけど、わざわざオレに会いに来たということは何か手がかりを掴んだのかもしれない
……もっともそれについてはあまり期待できるとは思えないけどな……
「お〜い、シンくーん」
聞こえてるから何度も呼ぶな
オレは心の中で毒づきながらドアの方に歩いていった。
「シン君今朝のこなたの事なんが、気を悪くしないでやってくれ」
相変わらず人を食ったような笑みで泉そうじろうはオレに軽く頭を下げる。
そんな事を言うために来たのか? オレはジロリと泉そうじろうを睨みつける。
「まあ、そうだな」
表情からオレが何を思ったのか分かったのか、泉そうじろうは転がってるぬいぐるみを手に取りながら頷く。
「こなたに悪気はないんだ。ただ今まで君みたいなのが周りにいなかったんで、興味が湧いたんだと思う」
「…………」
「不躾だったのは謝る
俺がそうだからか、こなたはちょっとそういう配慮に欠けるところがあってな。かなたがいればそうならなかったんだろうがな」
「……かなた?」
「ああ、こなたの母親で俺の妻だ。もっとも今は遠いところに逝っちまったけどな」
そう言って泉そうじろうは始めて寂しげに笑う。
オレは泉そうじろうの言葉を聞いて、朝の食卓での違和感がなんだったのかを理解した。
そして泉そうじろうがそのかなたっていう人を本当に大事に想っているのかを
それは分かってるになぜかオレの脳裏には疑惑が過ぎる。