15


 シン・アスカ。SEED DESTINYの一応の主人公、シスコン、種割れが出来る、逆ギレを起こす。

 これがわたしがぱっと浮かぶシン・アスカのイメージ。

 こうしてノートの端に書き込んで考えているが、朝にお父さんの言った意味は依然分からない。

 あのシン・アスカはわたしが知っている『シン・アスカ』とはそう変わりがない、アニメから出てきたまんまという表現がぴったりくる。

「分からないな〜」

「そうか。ならちゃんと聞いてたほうがええんとちゃうか?」

「えっ?」

 その瞬間、宇宙が落ちてきた



「あんたも懲りないわね」

 さっきの授業で出来たわたしのたんこぶを見て、親友であるかがみが呆れた声を上げる。

「む〜今回は違うよ。ちょっと考えごとしてたの」

「何を考えておられてたのですか?」

 同じく親友で完璧超人であるみゆきさんが首を傾げながらながら聞いてくる。

 その仕草は凄く可愛い、萌える

「どうせゲームの攻略法とかでしょ」

「失敬な!

 違うよ、人間関係についてだよ!」

 もっとも相手は二次元のキャラなんだから、

人間と言っていいか分からないけど、適当な言葉が思いつかないので一応そういうことにしておく

「人間関係って…こなちゃん好きな人とか出来たの………?」

 この中では一番初めに仲良くなった、これまた親友のつかさが聞いてくる。

 というかつかさ、それはあまりにも斜め下の考えなんだけど………

 まあ凄く広い意味では憧れだったアニメキャラのことに関することだから、

全くの的外れというわけではないけど、相手がシン・アスカだしな〜

「そういうわけじゃないんだよ。

 ただ相手の考えてることがよく分からないというか………」



 実際シン・アスカの言った意味は理解しがたいものだった。

 人を守るために生きている

 彼はそれで人生が楽しいんだろうか? ……とはいってもアニメのキャラにそんなことを問うのはナンセンス以外の何物でもない



「へーあんたがそんな事考えるなんてね〜。普段は人の都合構わず話すくせに」

「何か言いたそうだね?」

「そりゃあんなに訳分からない事を毎度言われてたら文句の一つも言いたくもなるわよ。

 本当に親の顔が………、ごめん………」



 一瞬かがみがなんで謝ったのか理解できなかったけど、お母さんのことを言ってるのが分かった。

 お母さんはわたしが生まれてすぐに亡くなった。

 だからわたしは物心ついた時から親はお父さんしかいない。

 でも別にわたしはそんなこと気にしていない

 そりゃお母さんがいないのは残念に思う時もあるけど、今が楽しいから問題ない

 きっとお母さんもそんなこと思ってくれてるはずだ、と都合のいい解釈をしている



「まあ、わたしの親はあれだもんね〜でもそれだったらかがみはもっとおしとやかになってもいいと思うんだけど〜?」

「くっ、人が悪いと思ったらすぐにあんたは調子に乗るわよね」

「まあまあ」

「お姉ちゃん、抑えて抑えて」

 何時も通りのやり取り、マンネリと言われようがやはり楽しい。

 みゆきさんは聖人君主と称されるほどに人ができてるし

 つかさは底抜けのお人好しだし

 かがみも普段はきついことを言ってくるけど本当は情に厚いし、優しい

 それに何よりこの三人はわたしがオタクだと知っても距離を置かずに変わらず接してくれる

 この人達がいるからわたしは今を楽しめてるんだと思う



 ん? ……ということはシン・アスカは周りにそんな人がいないから楽しめてないんだろうか………?



 わたしの頭の中で何かが動き始めていた。





戻る   別の日常を見る    進める