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 オレはコイツ達に話したことを後悔した。

 人が真面目に話してるのにヘラヘラしてるわ、はぐらかすわ、オマケにコイツ達は何か隠してる

 こんなのを少しでも信用したオレは馬鹿としか言いようがない

「すまないシン君。その、なんだな…こっちもふざけてるってわけじゃないんだ」

 そう言って男、泉そうじろうが頬をかく。

「じゃあなんなんだよその態度は!? オレは一刻も早くプラントに、C.E.の世界に戻らないと行けないんだ!! それなのに………!!」

「それは分かるんだが、事が事だ。そんな簡単に帰り方が分かるとは思えないな」

「何っ!?」

 泉そうじろうの言葉はますますオレの怒りに火をつける。



「それでもオレは帰らないと行けないんだ! アンタ達に協力する気がないんだったらオレは1人で帰る方法を探す!!」

「お、おい、シン君!?」

「……ねえ………」

 立ち上がろうとするオレを止めようとする泉そうじろうの横で泉こなたが呟く。

「そんなに帰りたいの?」

 泉こなたがオレを見てくる、その目には子供にしか出せない無邪気な色



「当たり前だろ!?」

「なんで? あっちの世界って戦争ばっかりなんでしょ?」

「ああそうだ」

「死んじゃうかもしれないんでしょ?」

「ああ」

「だったらなんで?」

「何がだよ!?」

 泉こなたが何を言いたいのか、それが一向に見えなくてオレのフラストレーションはどんどん溜まっていく。

「なんでそんなに帰りたいの?」

「あそこにはな守らないといけない人達がいるんだよ!! 自分で身を守る力がない人達が!!

 オレはそれを守り続けなきゃいけないんだ!!! オレみたいなヤツを出さないために!!!」

 コイツは何も分かっちゃいない

 大切なものを失うという意味を。だから無邪気にそんな事が聞けるんだ

 だけどオレの怒りをぶつけても泉こなたは首を捻っていた。



「……えーと…それって楽しいの?」

「なんだと!?」

「だってさー楽しいことがないと人生損だよ〜。

 例えばさーテスト前日なんてもう鬱で鬱で、逆にゲームの発売日前日は―――」

「うるさい!!!

 アンタに何が分かる!? 何も知らない、何も分からないアンタが!!!」

 オレはそう言い捨てると、元の部屋に戻るために踵を返した。

 なぜこの時この家を出て行かなかったか、それは泉こなたの言葉に何か引っかかりを感じたからだった。





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