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「俺の名前は泉そうじろう。でこっちが娘のこなた」

「よろ〜」

「ここがアンタ達の言う異世界ならオレは一刻も早く帰りたい」

 わたし達の自己紹介の流れをぶった切ってシン・アスカは無愛想に言ってくる。

「どうやったら帰れる?」

 シン・アスカの質問にわたしとお父さんはお互いを見合わせる。そして

『さあ?』

「ふざけんなよ!? オレは真剣に聞いてるんだ!!!」

「まあまあ、シン君。正直な話、俺達もなんで君がここに来たのか分からないんだ」

「なんだと!?」

「取りあえずは現状把握のためには冷静になる事、軍人の基本だろ?」

 お父さんは人差し指を上に向けて、シン・アスカを宥める。

 それを見てシン・アスカは悔しそうな顔をするものの押し黙る。

「よし、それじゃまずは食べようか」

「いただきま〜す」

 お父さんの号令の下、奇妙な組み合わせでの朝の時間が始まった。





「――という訳でオレは気付いたらここにいた」

 朝食を食べながらのシン・アスカからの説明を聞いてみたんだけど………。

「凄い奇跡だなー」

「奇跡って起こらないから奇跡って言うのにねー」

「ああ、全くだ」

 わたしはネタとして言っただけなのに、なぜかシン・アスカに頷かれた。

 ネタにマジレス、こいつは本物だ………



「となると…やっぱりシン君とレイが交わした会話はある程度本物と見ていいだろうな」

「でもさでもさ、レイってメサイアで死ぬじゃん。そんなこと出来るの?

 それに空間把握能力ってドラグーンだけじゃなくて次元とかも飛ばせるの? そんなんだったら、ニュータイプもびっくりだよ?」

「そこはほら…奇跡ってやつだろ」

「ちょっと待て」

 わたしたちの推論にシン・アスカが口を挟む。

「アンタ達C.E.が異世界って言うんなら、なんでそんなに詳しい事知ってるんだ?」

『えっ?』



 シン・アスカの目に再び疑念の色が浮かぶ。

 し、しまったー! ここはなんとかしないとまた振り出しだー!! な、なんとかしないと………

 助けを求めるようにお父さんを見ると、あっちも同じような顔をしてわたしを見てる。

 えーと、どうにかしないと………



「……それは禁則事項です☆」

 わたしは首を傾けながら自分の中で精一杯の可愛い声を出す。

 まあ実際、わたしたちが知ってる理由を説明したら、信じる信じないの前に彼が種割れするのが目に見えてるし、

さすがにわたし達が知ってる結末を話すのは彼にとっては少々残酷だ

 最近ゲームでは扱いが良くなってるのもあるけど、それはそれ

 公式はあくまでも本編なのだ

 リメイクを待てシン・アスカ!



「……ふざけるなよ」

 わたしの心の声が終わると同時にシン・アスカが呟く。

 わたしは口で漏らしてたのかと思い慌てて、口を押さえる。

「……こっちは本気なんだぞ………」

 その声はわたしが今まで聞いたどの声よりも低く、哀しい声だった。





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