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わたし達が保健室を出てから少ししてかがみが口を開いた。
「ま、まあ、大怪我にならなくてよかったじゃない」
「え、ええ。天原先生のお話ですと、一時的なものという事でしたし………」
ホントはシンの無事を大喜びしたいんだろうけど、わたしに気を遣って、いつも通り振舞うかがみとみゆきさん。
「だよねー優しいままのシンちゃんでよかったよ〜。テレビだとこういうのって記憶を無く――」
「つかさ!!!」
「あっ! ……ご、ごめんね、こなちゃん………」
「いいよいいよ。シンが無事だったんだし…性格も変わらなくて良かったよ」
最後の言葉は努めて明るく言ったけど、嘘ではない。
私の記憶を無くしているけど、私を気遣ってくれてる優しいシンのままで…おや、まてよ…ということは………。
「ふっふっふっ、そうか!我が世の春が来たということかー!!」
「こ、こなちゃんどうしたの!?」
わたしの突然の雄叫びにつかさが驚く。
「んふっふっふっ、シンはわたしの記憶を今無くしてる。
ということは今までのわたしとの好感度フラグがゼロなってる変わりに嫌いフラグもゼロになってるはず!」
「はぁ…で?」
全然分かってない皆を代表してかがみが続きを促す。
「シンの攻略法も二周目みたいにある程度分かるし、好感度フラグ取り放題!!!」
「アホかい!!! だいたいそんなのシンが記憶戻ったら意味無いでしょーが!?」
「甘いなかがみん」
かがみの指摘にわたしは不敵な笑みで返す。
「一種の『スリコミ』というものですか?」
「その通ーり! さすがみゆきさん!」
わたしはみゆきさんに親指を立てる。
「ゆきちゃん、どういうこと?」
「詳しい原理は省きますが、泉さんが今のシンさんに女性としての良いところを印象付けたとします。
そしてシンさんが記憶を戻されても、
シンさんの脳内には記憶を無くされた時の泉さんの女性としての良い印象が残り、シンさんは………」
「……シンちゃんはこなちゃんを女の子として今までより意識しちゃうってこと?」
「……はい」
「それが望みか!? あんたの!?」
「ハッハァ! わたしのではない! これが乙女の夢! 乙女の望み! 乙女の業!」
「くっ!」
「他者より近く! 他者より上へ!!」
「ふざけんな!」
「顰め! 妬め! 憎め! その身を喰い合うがいい!」
「あんたの理想よ! 思い通りになんて―――」
「すでに遅いさ! わたしには分かる、だから知る! 天が作ったチャンスに恵まれてわたしは幸せになるとな!!」
わたしはライバル達に高らかに勝利宣言を行った。