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「まあ理由は聞こえてきてたからな、大体は分かってる」
相変わらずの飄々とした態度で、そうじろうさんはオレとこなたの間を文字通り、割って入る。
そしてわざとらしく咳払いすると
「俺の為に喧嘩は止めて!」
「全然違うよ!」
「えっ、違うのか?」
「も〜」
一瞬にして、ピリピリした雰囲気が吹き飛んでいく。
この人の場合それを狙ってやってるのか、わざとやってるのか全く分からない
ただその行動に腹が立たない。
それはオレがこの人に尊敬に近い念を抱いているからかもしれない。
つらい過去を忘れるわけじゃなく、引きずるわけでもない、乗り越えて生きている人。
オレが今までにあった大人の中にはいないタイプの人だった。
「まあ、シン君の言う事は分かるつもりだ
俺もかなたが君の家族みたいに死んでいたら、とても祝う気にはなれなかったと思う」
「だったらなんでなんですか?」
単純な疑問だった。
そうじろうさんも俺と一緒で家族、それも愛した人を亡くしている。
それなのに、どうしてこなたが祝う事を止めさせないのか
そうじろうさんが娘であるこなたを溺愛している、それだけじゃないはずだ。
「笑ってたからな」
「えっ?」
そうじろうさんの顔は飄々とした顔ではなく、少しだけ寂しげだけどとても優しいものだった。
オレだったらきっと、きっと、こんな穏やかな顔は出来ない
亡くした人を話す時に
「俺は迷惑を掛けっぱなしだったのに、かなたは死ぬまで笑っていたんだよ、幸せだったってさ
だからさ」
そしてそうじろうさんはオレとこなたの頭をくしゃっと撫でる。
「ちゃんと、普通にお祝いするんだ
かなたが幸せと感じたこの家庭を守っていく
それが、今の俺がかなたに出来る唯一の事だからね」