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「そうじろうさんの誕生日を祝うのには賛成だ
オレはあの人にはお世話になってるしな
ただ、お前の死んだ母親の誕生日を祝うのには反対だ」
「はい?」
予想外の言葉にわたしは解答者の方を見上げる。
そのわたしの態度がシンの怒りに油を注ぐことになったらしい。
瞳の紅は深さを増し、こめかみ付近に青筋が浮かぶ。
「アンタは幼い時に母親を亡くしたらしいけど、そうじろうさんは違うだろ!?
かなたっていう人はここにはいないけどそうじろうさんの中にずっといるんだ!
それを祝うなんて無神経にも程があるだろ!!!」
どうやら、わたしはシンのトラウマセンサーを踏んでしまったらしい。
この状態のシンを説得するのは劇中を見ても、今までの経験からしてもすっごく難しい。
「そんなこと言われても、毎年やってるし」
かといってシンの言葉を受け入れて中止にするわけにはいかない。
お父さんもわたしもこの日を楽しみにしているのだから。
「それはそうじろうさんがアンタに気を遣ってるんだよ!!
そんな事も分からないのかよ!?」
なおも怒鳴り続けるシン
こうなったら例えビンタしても考えを改めないのが、シンという少年。
普段のわたしだったら、こりゃゆるくしがいがある! なんてフラグを取りに全力全開に行くけど、
あいにくと今はゲームのせいで時間が無くなっているのだ。
「だから、これは我が家の伝統で」
それでもなんとかわたしはシンの説得を試みる。
「じゃあ何か、アンタの家系は葬式の時はドンチャン騒ぎなのかよ!?」
「いや、そこはちょっと知らないけど………」
「ふざけるな!!!」
「ふざけてないし、ていうか極端すぐる!」
「なんだと!?
そっちが変な事を言ったのが………」
勢い収まらぬシンの言葉を右から左に流しつつ、わたしこっそりと溜め息を吐く。
なんか面倒臭くなってきた
シンほっといて始めよっかな
でも、それはそれで後々やっかいなことになりそうだし、やっぱり家族全員で祝った方がお母さんも喜ぶだろうし………
「暑いのに元気だな〜それが若さか」
わたしたちの怒鳴り合う声が聞こえてきたのか、今日の主役の一人がのんびりと声を掛けてきた。