「……オレは一体何してんだろ?」

 泡だて器でスポンジケーキの生地を混ぜながら呟く。

 異世界に来たことにではない、その件についてはある程度は自分で納得がいく答えを出している。

 疑問を持ったのは、今、ここでのことだ。



 確かに今日はオレの誕生日だし、ケーキはあれば嬉しい。そして自分が同じ年頃の男の中では料理ができるというのも自負している。

 だからといって、どうしてオレは自分の誕生日ケーキを自分の意思とは無関係に作らなければいけないのか?

 しかも作ってるのはオレ1人。

 こなたのやつは材料とレシピを置いてどっか行きやがったし。



「いや〜お待たせ〜」

「お前なー………」

 オレはあまりのことに言葉を失い、泡だて器をボールの中へ落とす。

 結構重大なミスだけど、今は完全にどうでもいい

 準備してくるといったこなたが、どうしてわざわざキッチンから出て行ったのか、もっと深く考えるべきだった。

 今更嘆いても、時は戻らない、それは良く知っている。



「こ、こなた〜、お、おまっ、なんて格好を〜!?」

 だけど言わずにはいられなかった。

 こなたは、エ、エ、エプロン、エプロンしか着ていないのだから! 例えでもなんでもく、本当にエプロンだけ



「大丈夫だよ、夜までわたしとシンだけだから☆」

「全っ然大丈夫じゃないだろ、何考えてんだあんた!?」

 ケーキを本人に作らせ、ようやく作るのを手伝うと思ったら、よりによって裸エプロン。

 わけが分からないとはこのことだ



「サービス、サービス♪ だって今日はシンの誕生日だからね」

 目の前で回って見せ、ノリノリのこなたとは反対にオレは頭痛しかしない。

 だけどこうやって頭を抑えてても何も改善はしないだろう。だったらもう開き直ってケーキを作るしかないわけだ。



「で、レシピを見たんだけど普通のケーキとはちょっと違うみたいだな」

「まだ暑いからね〜今回はアイスケーキにしようと思って、峰岸さんに聞いてきたの」

「わざわざあやのに聞かなくてもネットならすぐだろ?」

「え〜めんどくさいじゃん」

 アニメやゲームの事に関してはネットを駆使するくせに、こういうのに関しては不精になるんだ?

 とはいえあやの料理好きで中でもデザート作りには定評がある、ということはこのレシピはあてになるんだろう。



「じゃあ、パパッと作るか」

「お〜」

 やっぱりこなたのその姿、目のやり場に困る





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