「ダメだ、さっぱりだ!!」

 オレはさっきの授業のノートを見て、頭を抱える。

 その授業とは日本史。世界史と共にオレの苦手な教科だ。

 この2つの教科がなければ、オレはテストの総合成績トップ10入りも可能だった。

 だが過去2回の試験で、どちらともオレはコイツらに無惨な敗北をきっしていた。

 知ってる元号はC.E.だけ、唯一こっちの世界で知ってる元号は『平成』とゲームで出て来た『太正』だけだ。

 と、これくらい歴史はヤバイのだが…オレはこの世界で生まれてないんだから、こっちの歴史なんて分かるわけないだろ!!

 もっともこんなの先生に言えるわけがないし、恥ずかしい赤点を取らないためには勉強するしかない。

 仕方ない、またみゆきさんに聞くか。



「シン、どうしたんだい? お姉さんがなんでも教えてあげるよ」

 席から立ち上がろうとするオレに、こなたが自信満々に声を掛けてくる。

「……いや、いい」

「ちょ、ヒドッ!!」

「お前に聞いても時間のムダ、ムダ。オレはみゆきさんに聞くんだから」

 オレは手でこなたを追い払うフリをする。どうやらこの休み時間はこなたとじゃれて終わりそうだ。



「何もそこまで言わなくてもいいじゃん………」

「えっ?」

 こなたの反応はオレの予想とは違ったものだった。

 涙は出していないものの、それが出てくるのは時間の問題の様な顔のこなた。

 オレは何かまずいこと言ったか?

 オレは数秒前のこなたとのやり取りを頭の中で繰り返して見るが、さっぱり分からない。

 いつもの軽口の叩きあいだったはず、それなのに今のこなたは明らかに傷付いた顔をしている。

 オレの言い方に無意識に刺があったのか………?

「わ、ワルい…そ、その…い、言い過ぎた………」

 原因がどこにあるにせよ、オレに非があるのだから、オレはこなたに頭を下げる。

「……ううん、こっちこそごめん…気にしないで………」

 気にしないでって言われても…そんな顔されてたらな………。

 気まずい空気がオレ達の間に流れる。



「こなちゃん、シンちゃん! ……えっと…お取り込み中、かな?」

「そんなことないない。つかさ、何か用?」

 こなたはさっきと違い、いつものゆる〜い顔でつかさの方を向く。

「う、うん。次の授業は実験するから教室移動なんだって。だから早く行かないと………」

 確かに辺りを見渡すと、オレらを除いて数人しか教室にはいなかった。

「おお〜そうなんだー! だったら、早く行かないとね!」

 そう言うやいなや、こなたはさっさと行ってしまった。



「こなちゃんどうかしたの?」

 露骨に不信な態度をするこなたに、つかさが心配そうにオレに尋ねてくる。

「……さあ」

 つかさの問いにオレは首を傾ける事しかできなかった。





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