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「そろそろ許してあげよっかな………」

 わたしは鏡の中の自分に話しかける。

 いつまでも怒っているのもアレだし、なによりシンに、わたしとの思い出は楽しいままであってほしいし、

最後に気まずくなって別れるのは嫌でしょ、やっぱ。

 わたしは鏡の自分に笑いかけてから、トイレを出た。



「おそいぞー」

 教室に戻ったら、待っていたのはかがみとみゆきさんだった。

「あれ、つかさとシンは?」

「お二人で仲良く帰られましたよ」

 仲良く? 怒ってるわたしをほっといって、つかさと仲良く帰ったの?………



 ずきん



 胸の痛みがわたしを再び襲う。

「へ、へー良かったじゃんつかさ、フラグGetできてさー」

 なんでか分からない動揺を飲み込んで、わたしはいつも通りに言葉を返す。

「……本当にそう思ってる?」

「え?」

 かがみの質問をわたしは思わず聞き返す。

「なんとも思われませんか? シンさんがつかささんと二人で帰られたのですよ?」

 ……二人で、浮かんでくるシンの嬉しそうな顔。

 でもそれはわたしに向けられたものじゃなくて、つかさに向けられた笑顔………。



 動悸が早くなる。



 苦しい、息が詰まる。



「べ、別に…さっきも言ったとおり、つかさよかったな〜って………」

 この言葉にどれほどの説得力があるのだろう? それほどまでにこの言葉は自分でも薄っぺらく聞こえた。



「な、なんでそんなこと聞くのさ?」

 振り返るとこの言葉は自らトラップにかかりにいったようなものだった。

 二人は目を合わせて、小さく頷く。そしてかがみが口を開く。

「好きなんじゃないの? シンの事が」

 かがみの予想外の言葉にわたしは目を見開けることしかしかできなかった。





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