13
「なんで、体の心配するかなー」
いつもより早く登校したわたしは自分の席でふてくされていた。
わたしはそっちのことで怒ってるんじゃないのに………。
ただ…女の子…みんなと一緒の扱いして欲しいだけなのに…あの態度はないよ………。
……でもわたしは何でシンにそんな扱いしてもらいたいんだろ?
別にわたしとシンは性別と次元を越えた友達だし、シンがゆる〜くなって、
みんなとのフラグメイクを見て楽しめればそれでいいはずなのに………。
「うっ!」
まただ…また胸が痛くなってきた…ひょっとして、本当に体のことで心に余裕がなくなってるのかも………。
そんなこと今までなかったのに…そんなにヤバいのかな? わたし…まだまだしたいことが沢山あるのに………。
「おーす、珍しいわね、あんたがシンより先にくるなんて」
声のした方を振り向くと、つかさ、かがみ、みゆきさんがわたしに近付いてきた。
そうだ…中でもわたしが一番言っておきたいこと…みんなに言っておきたいことが…死ぬ前に………。
「みんな…話があるんだけど」
わたしのいつになく真剣な様子に、三人は顔を見合わせた。
「みんなこれからもシンと仲良くしてね。
シンは怒りっぽくて、攻撃的なとこもあるけど、本当は色々とあるからで、いいところもあるんだよ…って皆なら分かってるか」
「ちょ、ちょっと待って! いきなり、何を言い出すのよ?」
「まるで泉さんが遠くに行かれるみたいな言い方ですね………」
「えー!? そんなことないよね、こなちゃん?………」
不安そうにわたしを覗きこむ三人、ここまで言って隠すというイベントもあるが、そうは言ってられない。今回はわたしも真剣なのだ。
「うん…近いうちにわたし死ぬかもしれないんだ………」
「えっ…ウソだよね? こなちゃん………」
「な、何言ってんのよ!? あんた、冗談もほどほどにしときなさいよ!!」
つかさとかがみの問いに残酷にもわたしは首を横に振る。
「そんなぁー………」
「ウソ、ウソ………」
「泉さん、どういう病気なのですか? 現代の医療技術は大概の病気は治せます」
みゆきさんは冷静にわたしに質問してるように見えるけど、瞳には動揺の色があるのが、手にとるように分かった。
「まだ病院には行ってないんだけど…凄い病気なんだと思う…胸が急に痛くなって、
動悸が速くなって…かがみも見たでしょ?昨日のあれだよ」
「……ねぇ、あれって、しょっちゅう起きてるの?」
「えっ、ここ最近は、まあ………」
わたしの答えを聞くと、かがみを腕を組んで何やら考え始めた。
「おーい、シン。おれ今日の昼からラジオの収録だからノート取っといてくれよ」
「えー…分かったよ、変わりにお前のバイト先のカレーおごれよ」
「みんな、さっきのこと頼んだよ。それとわたしのことはシンに内緒だから。心配するし」
わたしはシンがこっちにくるまえにみんなに釘を打つ。
「でも…」
「分かりました。まだ病名がハッキリ分かるまでこのことは私達の胸の中に閉まっておきます」
みゆきさんの宣言につかさは渋々ながら頷き、かがみは依然として腕を組んだままだった。