「ううっ、ちょい休憩〜」

 わたしは言葉ともにその場にへろへろと倒れふす。

 時間にして一時間も練習してないんだけど、さすがに踊りっぱなしは少々きつい

 最近のオタ生活でピーク時の体力はもうないのだから



「ほらよ」

 準備していたドリンクが入ったペットボトルを、わたしの頭に器用にのっけるシン

「あんがと〜」



 うわー生き返るねー

 運動した後のスポーツドリンクは至高である



 などとここ最近抱かなかったアウトドア系の感想を抱いてたわたしは、シンがこっちを見てることに気付いた。



「なに、なんかついてる?」

「いや、ただな

 アンタにしては随分と労力を使うことをしてるんだなと」



 確かにわたしは労力を使うのは嫌い。

 宿題がその最たるもの、大抵自分の力でやってないし、定期試験だって事前にやらずにヤマ張りの一夜漬け

 二ヵ月も同じ屋根の下で住んでると、さすがのシンにも分かってきたらしい

 でもまだ肝心なことが分かってない



「わたしは興味が湧いたことなら、労力を惜しまないよ」

「そんなにこのダンスに興味が湧いたのか?」

「えっ? う〜ん」

 改めて聞かれると考えてしまう。

 基本的にそんなに深く考えて行動しないし



「まあ好きなアニメだったし、いっぺんは踊ってみたいと思ってたし

 バイト入ってわたしがメインの初めてのダンスだしねー嬉しいじゃん」

「なるほどな」

 納得するように頷くシン



「でもさー

 感情優先のシンに行動理論を聞かれると思わなかったよ」

「ちょっお前! まるでオレが感情でしか動いてないみたいじゃないか!?」

「違うの?」

「うっ………」



 固まるシン

 このリアクションは思い当たる節がありすぎるのか、それとも言われて初めて気が付いたのか

 どっちにせよ、中々愉快なリアクションである



「オレの事はいいんだよ!」

 得意の逆ギレを起こすシン

 いつ見ても見事なモンだねー



「とにかく、アンタが珍しく本気って事が分かった。だったらオレは協力するぞ」

「はっ?」

 攻守逆転

 まさか、シンの言葉に振り回されるとは思いもよらなかった。

 ていうかマジ意味不明



「ちょっと待ってろ!」

 それだけ言うとシンはミラコロ残像を生み出しそうな勢いで部屋を出て行った。





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