『なんか用かよ?』

 寝ていたのだろうか、シンが言葉を返してきたのは少ししてからだった。



「いや〜ちょっと頼みたいことがあってね」



 ガチャ



「嫌だ、って言ったら?」

 ドアを開けて出てきたシンの顔は、誰がどう見ても強張っていた。

 どう見たってタイミングが悪い

 かといってすごすごと引き下がるわけには行かないわけで



「なになに〜好きだったアイドル声優が交際宣言でもしたの?」

「…………」

 はい逆効果〜

 シンはさっきの顔に心底馬鹿にした顔を付けて、ドアを閉めようとする。



「嘘っ! ごめんってば!」

 わたしは素早くドアの間に足を滑らせ、手を合わせる。



「オレは暇じゃないんだ」

 顔だけ近づけてシンは、一言一言はっきりと言ってくる。

 もっともわたしもこの手の顔は見飽きてるので、扱いにも慣れてきた。



「いいじゃん、息抜きも必要だよ〜」

「アンタは息を抜きすぎてる気がするんだけどな」

「息は吐いて吸うもんだぜ!」

 シンは頭痛が痛いのか、手を額に乗せる。



「なんだよ、用って?」

 顔を上げてさっきと似た様な言葉を吐くシン。違うのは顔が強張ったものから、呆れたものになったということ



「じゃあじゃあ、付いてきて」

 わたしが伸ばした手を無視しつつも、シンは面戸臭そうに部屋から出てきた。





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