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「でもジオラマって、そうじろうさんどうやったらいいんですか?」
「俺が作って見せたいけど…その本棚の上から二段目、左から六冊目かな」
そうじろうさんはさすがに作家というだけあって、部屋の本棚のどこに何があるのかを把握しているぽかった。
そしてその通りにお目当ての本が見つかった。
目を通しただけでもかなりの材料が必要だった。
「ほら材料はこれで買ってきたらいいよ」
と言ってそうじろうさんはこの世界で、流通している中で1番高価な紙幣を取り出した。
確かに今のオレは居候で無収入の身だ。こんなのを買うお金がないのは事実だった。
「ってあれだぞ、夕食の買出しのお駄賃、それとそこの本を図書館に返してきてくれ」
さすがそうじろうさんはオレがお金を手に取らない理由が分かったのだろう。
といっても、その程度のお買い物の駄賃にしては、いくらなんでも高すぎる。
「やっぱりいいですよ。『ソイツ』を買ってもらったし」
フリーダムのプラモは、値段以上に価値があった。
オレがフリーダムを欲しがった理由はウサ晴らしだった。
それはある程度の効果があったのは認める。
プラモデルを組み立てるという作業も、この年になってワクワクして作ったのも事実だ。
だから、少しだけ、今は気持ちが楽だ。
「楽しそうだね、シン君」
「そ、そんなことないですよ!」
図星を指されて狼狽する。
これだったら完全にオレはこなたの手の平の上じゃないか。
「シン君、こなたがどうしてガンプラをプレゼントしたか分かるかい?」
「どうせ、オレがこうやってうろたえる姿を見て笑うためでしょ!」
そうじろうさんがこなたの父親だろうが、オレはきっぱりと言い放つ。
こなたがこういう悪戯が好きで、なおかつ、そういった事に関しての回転はオレよりも良いということが一緒に暮らしていて分かった事だ。
ただ理解したとしてオレがそれらについて許容できるかは別問題だった。
「まあ、それもあるだろうけど」
そうじろうさんは苦笑とは違う、困った顔の笑顔を見せる。
それはまるで先生が小さな子相手に説明を考えているような顔に見えた。