外の景色は真っ暗だった。

 予定よりも時間が掛かってしまったのは、なかなか気に入った物が見つからなかったから、

だけどそのお陰で納得する物を見付ける事が出来た。



「今日はありがとな。お陰で助かったよ」

 オレは隣で同じく電車に揺られているかがみに頭を下げる。

「えっ!? べ、別にあ、あんたの為にしたわけじゃないわよ、言ったでしょ!? たまたま用事があっただけだって!」

 かがみの言葉にオレは苦笑を浮かべ頷く。

「イニシャルも彫ってくれるんだな」

 少しからかいたい気もするけど今日はお世話になったことだし、オレは話を変える。

「どうせなら、SからKへ愛を込めてって、彫れば良かったんじゃない」

「勘弁してくれ」

 かがみのからかいにオレは心底げっそりした声で返す。

 そんな恥ずかしい事を冗談でもしたらこなたにどれだけ弄ばれるか、想像するだに恐ろしい。

「……それより、こなたは受け取ってくれるかな?」

 正直言うとまだこなたがこれを喜んで受け取ってくれる自信がない。

 最悪つき返される事だってある。

「大丈夫よ。あんたが選んだ物だもの、つかさやみゆきも言ってたでしょ。こなたも絶対に喜んでくれるわよ」

 かがみはさっきのイタズラ気な笑みではなく、優しい笑みを浮べて言ってくる。

 この笑みの時のかがみは嘘は言わない。だからオレはその笑顔を見て少し心が軽くなる。

 オレはそれを伝えるために、小さくかがみに頷いて見せる。かがみもそれを見て頷く。



「なあ、かがみ」

「どうしたのよ、急に?」

「さっき、誰かに見られてた気がしたんだけど………」

「嘘!? 気のせいじゃないの?」

「うーん、だといいけど………」

 オレはかがみの瞳に不安の色を見て、自分の軽率さを呪った。

 オレ達を見てた視線は、別にオレ達を本当に見てたかどうか分からない。

 今のオレのした事はかがみに無用な不安を煽らせるものでしかなかった。

 なんとかその不安を取り払わないと。

「かがみ、大丈夫だ。何があってもオレがお前を守る」

 この言葉にどれほど説得力があるかは分からないけど、これが今のオレに出来る最良の事だった。

 オレの言葉に何故かかがみは顔を赤くして、明後日の方を向く。

「……あんたってクサイ事を時々平気で言うわよね………。

 でも…頼りにしてるから………」

 そう言うかがみにもう不安な様子は見られなかった。

 それだけオレの事を信頼しているという事なのだろう。

 こなたに会わなければこんな事を思う事が出来なかっただろう。

 そういう意味でもこなたには感謝している。オレに色々な出会いを与えてくれたのだから………。

 だからお礼を言いたい。このプレゼントを通して………。

「シン、乗り換え」

「ああ」

 オレはかがみと共に電車を降りた。





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