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「あの〜こなたさん」



「なに?」

「そろそろ足が………」

「崩したらダメだよ♪」

「は、はい………」

 オレの気弱な声に振り返るこなたの口調はいつも通りだがその目は笑っていなかった。



 夕飯が終わったオレはこなたに有無を言わさず正座をさせられ、早1時間。

 しかしこなたの機嫌の悪さは一向に変わらなかった。



『うわあああッ!』



 その証拠にこなたは先ほどから連ザで戦力ゲージ無限のデスティニー(パイロットはオレ)を何度も何度も撃破していた。

しかもインフィニットジャスティスを使って!!!

 ……生き地獄だ………どうしてオレがこんな目に会わなきゃならないんだ………。

 全く持ってこなたの機嫌が悪くなる理由が思い浮かばない。

 別に風呂掃除もすっぽかしてないし、宿題も教えたし、一体何に怒ってるんだ、こいつは?



『……ッ!? そんな………』



「こなた、なんだよ、何怒ってるんだ!?」

 デスティニーの破壊数がそろそろ200体に届きそうなところで色々とオレの限界がやってきた。

「分かんないかな?」

 こなたはPS2の電源を落とし、こっちを向く。

 どうやら少し機嫌が直ったらしく、どさくさにオレが紛れて足を崩したが何も言わなかった。

「わたしがなんで怒ってるかを」

「……かがみがミスコンに出ることを秘密にしてたからか?」

 こなたが怒りそうなのはこれくらいしか思い浮かばない。

「そのとおーり!もう今週末がミスコンじゃん!

 もっと早く教えてくれればかがみを弄べたものを!!」

 こなたは床を叩いて悔しがる。

 だから、かがみはそれがイヤだから話さなかったんだって。

 もっともそんな事を言えばこなたの機嫌が悪くなりそうだったので、オレはダンマリを決め込む。

 しかし、この程度の事でこなたがあんなに怒るとは思えない。やはり、別の事なのか?



「まあ、それはいいや」

 思ったとおりこなたはこのことではあまり怒っていないらしい。せいぜい後で、チョココロネをたかられる位だろう。

「じゃあなんなんだよ?」

「……かがみに聞いたよ、話したんだね」

 さっきとは明らかに違うこなたの声のトーンにか、

それともこなたが言った内容の意味からかどっちに驚いたかはオレ自身も分からないが、オレの体がビクッと小さく震える。

「……あ、ああ…話した」

「そうなんだ」

 興味なさ気なこなたの返事、だがそれがかえって不気味だった。





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