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「ところで、なんでまつり姉さんがいるの?」
「大学は今日休講があって午前で終わり〜。
それよりさ、どれがいいと思う?」
まつり姉さんはカタログを指差しながら私に聞いてくる。
そのカタログは何故か切り貼りされていて、多くのドレスが載っていた。
「これ………」
「そう。かがみが着る予定のドレス。
私達でかなり絞ったんだけど、最後は自分で決めたほうがいいでしょ?」
「う、うん」
私は頷くとカタログに目を通す。
値段はドレスにしては安いものだろうけど、それでも思わず桁の数を数えるほどのものだった。
「……こんなに使っていいの?」
「いいんじゃない?」
私の質問にまつり姉さんは手をひらひらさせる。
「また適当に………」
「別に使い捨てじゃないんだし、シン君とデートの時でもまた使ったらいいじゃん」
「ちょ、ちょっと、なんて事言うのよ!?」
「お〜赤くなって、妹よ、青春してるな」
「くっ………」
これ以上言ってもますますからかわれるだけなので、私は黙ってカタログに目を通した。
「いいのあった?」
「うーん、これかな?」
私はお母さんの特製のおかゆを食べながら、一つのドレスを指差した。
「おお! さすが双子だねー」
「つかさが選んだのよ、それ」
まつり姉さんのリアクションを訝しげに見る私に、お母さんが笑って説明をしてくる。
確かに言われてみるとつかさ好みの純白のドレス。
ただ問題は………。
「色がね〜」
「なんで? 白なんて明らかにおあつらえ向きじゃん?
まさかピンクとか?」
「そんなの私に似合うわけないでしょ………」
「突っ込みにいつものキレがないねー。やっぱり調子悪いんじゃない?」
まつり姉さんはどういう基準で私が元気かどうか見極めてるんだろ?………
「色違いねー………」
私達姉妹のやり取りを放って、お母さんは別のパンフレットを探す。
「あったわ…種類はこれだけね」
お母さんが見せてくれたカタログには、さっきのドレスの色違いが数着―――
「これ!!!」
私は途中にも関わらず、大声で一着のドレスを指した。